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タロン・ルーやNBA選手たちと対戦したラスベガスのポーカーテーブルで学んだこと

Stephen Noh

坂田彩音 Ayane Sakata

タロン・ルーやNBA選手たちと対戦したラスベガスのポーカーテーブルで学んだこと image

ラスベガスのポーカーテーブルでは、勝負の世界を渡り歩いてきた人間の素顔が現れる。元プロポーカープレイヤーである『スポーティングニュース』のステフ・ノー記者は、そのキャリアを通してラスベガスのポーカー文化やプライベートゲームの裏側、そしてポーカーテーブルに集まるNBA選手たちの意外な素顔を見てきた。

ここでは、タロン・ルー(現ロサンゼルス・クリッパーズ・ヘッドコーチ)をはじめとする、NBA選手たちと交わったラスベガスでの日々を振り返る。

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■ラスベガスで見た、タロン・ルーの“勝負師としての素顔”

タロン・ルー(現ロサンゼルス・クリッパーズのヘッドコーチ)がポーカーをしているのを初めて見かけたのは、2010年頃のラスべガスだった。それは彼がNBAで11年間プレーし、通算2100万ドルを稼いで引退したばかりの頃だった。私がそのことを知ったのは、ベラージオのポーカールームにいた友人からルーが座っているテーブル番号と「早く来い」というテキストメッセージが送られてきたからだった。

当時、私は26歳のプロポーカープレイヤーで、低~中レートのゲームを中心に年間約1600時間カジノにこもり、年間でおよそ6万ドルを稼いでいた。100ドル札で2万ドルを手元資金として持ち、それを5000ドルずつ輪ゴムで束ね、ベラージオ、ウィン、ヴェネチアン各カジノの貸金庫に分散して保管していた。さらに、自宅の本棚には「ゴルフ・パッティング・ティップス」と書かれたVHSのハードケースの中に、もう1万ドルを隠していた。数年前、わずか2500ドルと月400ドルのレンタルルームからラスベガスに出てきた身としては、その金額はまるで100万ドルに思えた。

私の仕事は、カジノに出向き“タロン・ルーのような人”がポーカールームにふらりと現れるのを待つことだった。ラスベガスの常連である私たちは、観光客を騙していたわけではない(そう思っている人もいたが)ものの、「どこにいいゲームがあるか」は互いに情報を共有していた。

私はポーカールームの昼の責任者であるダンのところに歩いていき、心付けとして赤い5ドルチップを2枚渡した。

「なあダン、29番テーブルに移してもらえないかな?」

ダンは笑いながらチップをポケットに入れた。「もちろん。でも、君は今リストの12番目にいるよ。」

その日は結局、彼と同じテーブルではプレーできなかった。同じ考えの人間が、すでに何人もいたのだ。しかしその後、彼とは何度かプレーする機会があり、街中でもたまに見かけた。私は2015年にラスベガスを離れ、2021年にはポーカーを生業とするのをやめ、『スポーティングニュース』で仕事を始めた。彼はいまもベガスに住んでいて、どうやら今もこのゲームを楽しんでいるらしい。

彼は現在、親友のチャウンシー・ビラップスとマフィアが共に運営していた違法ポーカーに参加していたと報じられている。パブロ・トーレの報道 によると、そこではタロン・ルーが "whale"(クジラ=大金を賭ける客)として宣伝され、他のプレイヤーを集めるための『目玉』に使われていたという。

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■ポーカーテーブルにおける『クジラ』とは?

まず、『クジラ』について知っておくべきことがある。有名だからといって、必ずしもクジラというわけではない。例えば、一般の人はギー・ラリベルテ(シルク・ドゥ・ソレイユの共同創設者)の名前を知らないかもしれないが、ポーカープレイヤーたちはよく知っている。彼がこのゲームで何百万ドルも負けているからだ。

つまり、タロン・ルーは元NBA選手だからという理由でクジラとして売り込まれたわけではなかった。もちろん、レイカーズファンにとっては「コービー・ブライアントの元チームメイトと一緒にプレーした」というのは、あとで語るには格好のネタになるだろう。だが、常連のプレイヤーたちが彼とプレーしたがった本当の理由は別にあった。彼は金を持っていて、ポーカーは下手だろうとみんなが思っていたからだ。ポーカーを極めるには、一生をかけて学ぶような努力が必要であり、異なるキャリアを持つ人たちにまともに学ぶだけの時間はほとんどないものだ。

クジラに対して、「あなたはクジラだ」なんて口が裂けても言ってはいけない。代わりに、王族を扱うように丁重に接し、しょうもない冗談には大声で笑い、負けたときには運が悪かったですね、と同情してやるのだ。もし彼がクジラとして宣伝されていたのだとしたら、彼自身はそのことを知らなかったのかもしれない。

誰だって、狙われる側になりたいわけではない。クジラが初めて部屋に入ってきたとき、その場の全員が『彼がどれだけ負けるか』を楽しみにしていたなんて、私自身もちろん口にしなかった。もし観光客がポーカールームのハイエナぶりを知ってしまえば、たいていは席を離れるだろう。

そういう意味では、プライベートゲームはプロとクジラの両方にとって魅力がある。クジラからすれば、自らの資金を狙って並んでいる連中の列を目にすることもないし、負けても公に知られずに済む。そして、対戦相手をある程度選ぶことができ、負けてもせめて楽しめる。フーディーにヘッドホン姿で、風呂にも入らず毎日同じ席に座っている若造と向き合うより、よほどマシだ。

プロからすれば、クジラの金を得るために大勢の中で争う必要がない、という利点がある。一方で、強盗に遭う、イカサマに引っかかる、逮捕される、支払いを踏み倒される、あるいは15年後にポッドキャストで名前を出される、といったリスクは格段に高くなる。そのリスクに見合うだけのリターンがあるかどうかを見極めることが私たちの仕事だった。そして、我々はその判断はとても得意なほうだった。

ただ、私たち全員にとっての残念な知らせは、ルーは良いクジラではなかったということだ。何度か同じテーブルを囲んだが、実際のところ、彼はかなり堅実なポーカープレイヤーだったのだ。

Tyronn Lue

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■ポーカーテーブルで出会った著名人たち

ポーカーとは、数々の欺きの中から真実を見抜くゲームだ。またおかしなことに、このゲームはプレイヤーの本当の性格を暴き出すという一面もある。どれだけ隠そうとしても、ポーカーでの極端な『痛み』が、やがてその人の本性を引きずり出すのだ。

私の知る限り、ジェームズ・ウッズ(ハリウッド俳優)のことを好きな人間はいなかった。レイ・リオッタ(ハリウッド俳優)は負けるたび、しかも頻繁に私をくそ野郎と罵った。その一方で、オーレル・ハーシュハイザー(元MLB選手)は常に感情をコントロールしていた。

当時、私が常連だったポーカールームには、多くのNBA選手たちが訪れた。彼らの多くは競争に惹きつけられ、自らの腕を試すためならプロ相手に数千ドルを平気で溶かす覚悟があった。ラッセル・ウェストブルックは、純粋な攻撃性だけで大量のハンド(役)をものにしていた。ティム・ダンカンは典型的な『ニット』だった。つまり退屈なまでに慎重で忍耐強いプレイヤーだ。

タロン・ルーは紳士だった。ポーカールームに現れた時はまるで古くからの仲間かのように振る舞った。

ラスベガスという街は、そこで暮らす人間にとっても面白い土地だ。人生の中で最も怪しい連中にも出会うし、同時に最も信頼できる人間にも出会う。

この街では評判が全てである。ある日、私は見知らぬ男からポーカーで大勝ちした6万ドル分のチップを一晩預かってくれと頼まれたことがある。彼はクラブに行った後でその金をクラップス(サイコロ賭博)に使わないようにしたかったのだ。彼の友人が私のことを保証したこともあり、彼は何のためらいもなくチップを渡してきた。

だが、プレイヤーの中には、人当たりの良さを武器に借金を重ねてギャンブル依存を満たす、社会病質的なハゲタカのような連中もいる。

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■タロン・ルーの評判は良かったが…

タロン・ルーがどちらのタイプに属するのかを判断できるほど、私は彼のことをよく知っているわけではない。私は彼のプライベートゲームでプレーできるほどの大きな金額を賭けたこともなかった。ただ、チャウンシー・ビラップスが仕切っていたとされるイカサマ疑惑のゲームで、6桁(10万ドル単位)の金を騙し取られたという話を、友人の友人から聞いたことがある。12年間もカジノの中で過ごしていれば、そうした話は嫌でも耳に入ってくる。私の聞いた限りでは、ルーは良い評判を持っているが、ビラップスについて同じことは言えない。

もし本当にギャンブルというものを理解しているなら、どんなプライベートゲームでの大勝よりも評判が重要であることを知っているはずだ。金は出たり入ったりするものであるのに対し、信用は無限に使える小切手のようなものだ。評判が良ければ、たとえ銀行口座が空でも、本当の意味で破産することはない。

ポーカーとは、不完全な情報の中で戦うゲームだ。手がかりを集め、そして最終的には、自分を信じて金を賭ける。ルーがあの違法賭博に関与していたのかどうかは分からない。だが、どちらに賭けるか、その答えだけは分かっている。

原文:What I learned playing poker against Ty Lue, other NBA figures in my days as a Vegas professional(抄訳)
翻訳:坂田彩音

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