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サンダーのジェイレン・ウィリアムズのドラフトを振り返る なぜ全体12位で指名されたのか?

Stephen Noh

小野春稀 Haruki Ono

サンダーのジェイレン・ウィリアムズのドラフトを振り返る なぜ全体12位で指名されたのか? image

「彼の身体は腕と足だけに見えた」

サンタクララ大学のアシスタント、ジェイソン・ルドウィグが初めてジェイレン・ウィリアムズを見たのは2017年の夏だった。高校2年生を終えたばかりのウィリアムズは、AAUトーナメントに出場していた。ルドウィグは長期間にわたるスカウティングを終えて会場を後にする途中だった。隅にひっそりと置かれた50番台のコートを通り過ぎたとき、顔見知りのAAUコーチに出くわした。

「ジェイソン、うちの若手を見てくれないか」そのコーチはルドウィグに言った。

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ルドウィグは、もう1試合見ていくことにした。彼は大勢の父兄の隣の席に座った。スカウトでいっぱいの会場で、その日ウィリアムズを見ていた大学コーチは彼だけだったことは間違いない。

他のスカウトたちを責めることはできなかった。15歳のウィリアムズには、身体的に目を引くものはあまりなかったからだ。ウィリアムズは高校2年生の時、177cmだった。その後サンタクララ大学からオファーを受けるまでには186cmまで成長し、彼がNBAに入ったときには201cmになるとは誰が予想できただろうか?

「彼の身体は腕と足だけに見えた」と、ルドウィグは初めてウィリアムズを見たときのことを振り返った。

「身体に対して足が大きすぎるし、まだ身体が成長しきっていなかったから、走り方も不自然だった」

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2022年NBAドラフト最大の掘り出し物に

当時、ウィリアムズはすでにトレードマークの長い腕を持っていた。その大きな足も、遅咲きの選手になり得るかもしれないとルドウィグに思わせた。しかし、何より彼の心に残ったのは、ウィリアムズのプレイぶりだった。

「走ったり跳んだりするのは得意じゃなかったけど、スキルは高かった。パスもドリブルもシュートもできた。フィーリングもいいし、ジャンプショットもうまかった」

ルドウィグは、ウィリアムズを注目する価値があると考えた。あとは身体が成長すれば、将来は奨学金をもらえる選手になるかもしれない」

その日、ルドウィグが見たのがNBAプレイヤーだと言ったら、噓になるだろう。当時のウィリアムズは、リクルートクラスのトップ100にすら及ばなかった。

「たまたまコートが出口に向かう途中にあったのは幸運だったよ」とルドウィグは認めた。

ウィリアムズは常に遅咲きの選手だった。2022年のドラフトで12位で指名され、彼はこのドラフトクラスで最大の掘り出し物となった。サンダーがウィリアムズを信頼したのは、彼がドラフトコンバイン(ドラフト候補選手を集めて行われる能力審査イベント)で歴史的なパフォーマンスを見せたことが大きな要因だ。

Adam Silver, Jalen Williams

ジェイレン・ウィリアムズが全体12位で指名されるまで

身体検査で驚異的な数字を記録

ウィリアムズはサンタクララ大ではいい選手だったが、NBA関係者からの関心は高くなかった。大学3年目の開幕時、彼はドラフト候補には挙がっていなかったが、シーズンが終わる頃には、彼は2巡目候補には名を連ねるほどに成長した。サンタクララ大は、彼が大学4年目のシーズンに戻ってくる可能性は十分あると信じていた。一方のウィリアムズはNBAドラフトコンバインに参加することを決めた。

スカウトは、ウィリアムズが年長のドラフト候補であること、彼が所属しているカンファレンスがトップクラスではないことを懸念していた。例えば1年生の時に、ゴンザガ大に60点取られた試合では4得点に終わった。スカウトは、彼が高いレベルでより良いプレイをできるかどうか疑問に思った。

「彼の運動能力についての懸念は常に存在していた」とルドウィグは振り返る。

ルドウィグは異なる意見を持っていた。彼はUCLAでコーチをしたことがあり、ラッセル・ウェストブルックのようなNBAの有望株を指導したこともあった。ウィリアムズはウェストブルックではなかったが、1年生の時から3つのポジションにわたって相手のベストプレイヤーを守っていた。ルドウィグはドラフトコンバインでウィリアムズを見れば、そのような運動能力の懸念は払拭されることを知っていた。

ルドウィグは正しかった。ウィリアムズはドラフトコンバインで衝撃的なパフォーマンスを見せた。それはコンバイン史上最高のパフォーマンスで、リーグ中のドラフト指名候補に躍り出たのだ。大学に戻るかどうかの迷いは一瞬で吹き飛んだ。

身体検査で、ウィリアムズは靴を履いた状態で6フィート5.75インチ(約197cm)というサイズを計測した。そして、彼のウィングスパン(両腕を広げたときの長さ)をチェックする時が来た。

スタッフは何度も、何度も測りなおした。到底あり得ない数字が飛び出したからだ。

一説では、最終的に測り終えて書き記されるまで12回かかったと言われている。ルドウィグは何度も測定されたことを知っているが、その話を聞くたびにその回数が増えていくと冗談めかして語った。

ウィリアムズの220cmというあまりにも長すぎるウィングスパンは、現チームメイトで身長208cmを誇るジェイリン・ウィリアムズのような多くのセンターの選手たちよりも長かった。ジェイレン・ウィリアムズの身長とウィングスパンの差は、彼のドラフトクラスで最も大きかった。

ウィリアムズは他の運動能力テストの測定でも爆発的な成績を残した。最大ジャンプ力99cmはクラスで5位。垂直跳び85cmは2位。3/4スプリントの3秒11は4位。すべての項目で5位以内に入っている。

スクリメージでの圧倒的なパフォーマンス

SB Nationのドラフトライター、リッキー・オドネルは2013年からドラフトコンバインに通っていた。彼は会場がウィリアムズの話題で持ち切りだったのを覚えている。

「彼は爆発していた」とオドネルはスポーティングニュースに語った。

「身体テストに加えて、彼はピック・アンド・ロールのプレイメイキング力と高確率の3ポイントショットを併せ持っていた。それをやってのける選手がどれだけいるだろうか?」

スカウトたちは、ウィリアムズがドラフト1巡目指名後半まで上昇する可能性があると考え始めていた。最初の5on5スクリメージ(試合形式練習)の後、それは確信に変わった。

ドラフト上位候補の多くは、スクリメージをまるで疫病神のように避ける。

「誰にもプレイを見せないことには、多くのメリットがあるんだ」とオドネルは語る。

「怪我を避けたり、悪いパフォーマンスで株が下がるのを防ぐといった具合にね」

ウィリアムズの姿勢は正反対だった。彼は自分自身を証明したかったし、この試合では文句なしのベストプレイヤーだった。巧みなドライブでレイアップを決め、高度なスキップパスを投げ、ピック・アンド・ロール時のロールマンとして堂々とダンクを決めた。

ほとんどの有望株は、これほど素晴らしいパフォーマンスの後を見せたならば、2日目のスクリメージは欠席するだろう。

「いいスクリメージを披露した選手は、その後は出場しない傾向がある気がする。今年はタハード・ペティフォードがそうだったし、マキシム・レイノーもそうだった。リスクを避けているんだ」とオドネルは言う。

ウィリアムズはまったく違うアプローチだった。

「彼は競争者だ。何事にも尻込みしない」

ドラフト全体12位でサンダーに指名される

その翌日、ウィリアムズは再びスクリメージに出場し、株をさらに引き上げた。2巡目指名が濃厚だったウィリアムズだが、ほとんどのモックドラフト(指名予想)で20位台に入った。

ドラフト直前時点では、最高のシナリオは10位台後半での指名、最悪の場合は、20位台前半での指名が予想されていた。

サンダーがウィリアムズを12位で指名したとき、ウィリアムズ自身を含め、誰もが衝撃を受けた。指名されるまで、ウィリアムズはドラフト前のワークアウトは不合格だったと考えていた。ドリル中にマーク・デイグノートHCとトラッシュトークをしたときには、彼はデイグノートが誰なのかさえ知らなかった。

「これは本当に現実なのかな」とウィリアムズは指名された直後、インタビュアーのテイラー・ルークスに語った。

「本当に言葉が出てこない。まだ震えているよ」

今や彼は、NBAファイナルで5つのポジションをすべて守っている。オールスター、オールNBAチーム、オールディフェンシブチームにも選ばれた。かつては全くの無名だったが、今やリーグで最も輝く若手スターの1人になった。

そして、対戦相手にとって悪いニュースは、彼がさらに成長を続けているということだ。

原文:Jalen Williams 2022 draft revisited: How Santa Clara star ended up at No. 12 to the Thunder
抄訳:小野春稀(スポーティングニュース日本版)


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Stephen Noh

Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

小野春稀 Haruki Ono

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。大学生。元はスポーティングニュースのNBAニュースを毎日楽しみにしていた読者であったが、今では縁あってライターとして活動している。小学生の時にカイリー・アービングのドリブルに魅了されNBAの虜に。その影響で中高6年間はバスケに熱中した。主にNBAの記事を執筆している。