ビール獲得でサンズは強くなるのか? ロスター編成の選択肢は?

Stephen Noh

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フェニックス・サンズがワシントン・ウィザーズとのトレードでブラッドリー・ビールを獲得するという取引の内容は、多くの人を驚かせた。『ESPN』のエイドリアン・ウォジナロウスキー記者によると、ウィザーズがサンズから獲得するのはクリス・ポール、ランドリー・シャメット、複数のドラフト2巡目指名権、指名交換権という。

一見すると、契約内容にかかわらず、ビールほどの選手を獲得するのに、サンズが多くを手放したようには見えない。彼らはいずれにしてもポールを放出しようとしていたし、ビールは2022-2023シーズンに平均23得点をあげている選手だ。それでも、複雑な反応を招くのは避けられない。

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29歳のビールが2026-2027シーズンに年俸5710万ドル(約81億820万円/1ドル=142円換算)を稼ぐという契約から、長期的にサンズにとって価値があるのかという懸念があるのは確かだ。だが、来季に関して言えば、この取引はサンズをより優勝へと向かわせる。

ブラッドリー・ビールはサンズのロスターに合うのか?

ビールはケビン・デュラント、デビン・ブッカーと組ませるのに完璧なスーパースターではない。だが、完璧は進歩の敵でもある。ビールの最も価値あるスキルのひとつはショットクリエイションだが、それは必ずしもこのチーム必要ではないだろう。それでも、彼はボールのないところでの脅威として大きく役立てる。

ビールはキャリアが進むにつれ、ショット成功率が落ちている。ここ4シーズンの3ポイントショット成功率は34.5%だ。これは、ショットを打つかたちのクオリティーによるところが大きい。平凡なウィザーズの攻撃において、ドリブルからショットをつくり出さなければいけないことが多かったのだ。ジョン・ウォールと一緒にプレイした最初の7シーズン、ビールのユーセージ率は30%を切っており、3P成功率は38.4%とはるかに優れていた。

サンズは2022-23シーズンでも何度か、デュラントがコーナーで動かずにシューターとなる攻撃で、相手チームを苦境に陥れるところを見せている。ブッカーとビールも同じ役割をこなすことが可能だ。サンズは驚くほど充実した選手層を持ち合わせており、相手はディフェンスを収縮させて守ることが難しくなる。

今回の取引に関して妥当な批判のひとつは、現在のビールの守備がサンズにとって問題になり得るということだろう。キャリアの序盤ではかなり優れたディフェンダーだったが、現在ではマイナスとなってしまっている。しかし、より優れたチームで、攻撃の負担が減れば、少なくとも平均的なディフェンダーに戻れると考えるのが妥当だろう。ビールはここ4年のうちの2年でリーグトップ5に入るユーセージ率だった。

また、ビールはレギュラーシーズン中にデュラントが負傷した場合の良い保険にもなる。35歳となるシーズンだけに、デュラントは出場時間を抑えていく必要があるだろう。アキレス腱の断裂以降、この3年でデュラントがシーズン55試合以上に出場したことはない。

ロスター編成のためにサンズに残る資金は?

重要な問題だ。ブッカーデュラント、ビール、そしてディアンドレ・エイトン以外のロスターの編成において、サンズは極めて窮屈な状況に陥る。この4人だけでサラリーが1億6200万ドル(約230億400万円)だ。かなりの税額となるだろう。

『The Athletic』のジョシュ・ロビンス記者によると、ウィザーズのジョーダン・グッドウィンが取引に含まれるかもしれないという。ワシントンのファン以外には知られていないかもしれないが、重要な戦力であり、優れた若手だ。タフなディフェンダーで、ボールを持った時のミスが少ない。サンズに大きく貢献するはずだ。

サンズが満たなければならないそのほかのロスター枠10人に関しては、最小限の契約を結ぶか、自軍のフリーエージェント選手を残すかに限られそうだ。2022-23シーズンもすでに層の問題があったが、今夏もこれからチームにとって大きな課題となるだろう。

Jock Landale, Josh Okogie (Phoenix Suns) 06182023
Getty Images

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ロスター編成におけるサンズの最善策は?

プレイオフでポールが負傷して以降、ブッカーはポイントガードとしてプレイできるかもしれないところを示した。このロスターではポイントガードの層が問題となるため、ブッカーはこの位置でプレイしなければいけないことが増えるだろう。

キャメロン・ペインはポールのバックアップとして素晴らしくはなかった。だが、サラリーは無保証の650万ドル(約9億2300万円)であり、サンズは彼を残さなければならないだろう。そのほかのベテランFAの可能性としては、レジー・ジャクソン、デニス・スミスJr.、イシュ・スミス、ゴラン・ドラギッチ、ハウル・ネトといった選手たちがあげられる。

サンズはほかのFA選手たちの多くを呼び戻す必要があるだろう。最低限のサラリーでより優れた代役を見つけることはできないだろうからだ。つまり、トーリー・クレッグ、ジョック・ランデール、ビスマック・ビオンボといった選手たちも、おそらくは残すことになる。

デイミオン・リー、ジョシュ・オコーギー、テレンス・ロス、TJ・ウォーレンといった選手たちも残そうとすべきだ。だが、この4選手にサンズが提示できることは非常に限られている。ノンバード例外条項があり、これらの選手との再契約は、1年目で240万ドル(約3億4080万円)までとなる。

ロスターを埋めるために、サンズは最低額で何人か加える必要があるだろう。優勝リングを追い求めたり、サンズのスターたちの近くでオープンなショットを打ち、自分の価値を高めるための良い機会と見るベテランたちを獲得するかもしれない。

渡邊雄太がデュラントと再会するのも良いかもしれない。ダニー・グリーンはまだやれるだけの力を残しているだろうか。ミルウォーキー・バックスで見事に復帰した35歳のジョー・イングルズが、最低額の契約で加わるだろうか。最低額で優れたシューターを見つけるのは難しい。サンズにはそんな課題が待っているのだ。

サンズはどれほど強くなる?

ロスターを埋めるためのローテーションプレイヤーたちを見つけられるかどうかが分かる前に、サンズがどれほど良いチームになるかを予測するのは、極めて難しいことだ。堅実な7人のローテーションがいかに重要かは、NBAプレイオフ2023でも示された。

その上で、今回のサンズの動きを好意的に見ている。彼らは層を厚くするための手段をいくつか犠牲にした。だが、ビールのために手放したもので、現実的にどれだけ質の高いロールプレイヤーを獲得できただろうか。エイトンを放出して複数のロールプレイヤーを獲得する可能性もあり、チームは検討すべきだろう。

ビールとデュラントの生産性が落ちていく一方で、彼らに支払う額は大きくなっていく。サンズは厳しい世界に突入するだろう。だが、誰が本当にそれを気にするだろうか?

優勝を見据えている中で将来の問題を騒ぐのは大げさだ。優勝を狙える期間はあっという間だ。再び狙えるようになるまで、何十年とかかったり、多くの幸運が必要になることもある。デュラントの年齢を考えれば、サンズはすでに限られた時間の中で動いてきたのだ。彼らは今、すべてを出し尽くしているのである。

サンズはいまだかつて優勝したことがない。ウェスタン・カンファレンスの競争は激しくなっていくが、サンズは優勝経験がないという流れを断ち切るために、できる限りアグレッシブに動いたのだ。その点に関して、彼らは称賛に値する。

原文:Bradley Beal's fit on the Suns and options to build out the rest of their roster(抄訳)

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Stephen Noh

Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.