殿堂入り投票でイチローに投票しなかった1人の記者は誰?|その投票方法と過去の最高得票率一覧

石山修二 Shuji Ishiyama

Teddy Ricketson

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イチローはメジャーリーグ(MLB)史上最高の打者の一人であり、現地27日(日)の式典で晴れて殿堂入りを果たした今、クーパーズタウンに永遠にその名を刻むことになる。彼が殿堂入りすることは長年予想されていたが、その選出結果は依然として議論の的となっている。

野球の殿堂はアメリカの国民的スポーツの歴史において最も優れた選手たちを称えるためのものだが、MLBの殿堂入りは厳しく審査される。2000年代初頭のPED(Performance Enhancing Drugs、パフォーマンス増強薬)使用者に対する投票委員会の対応によって、バリー・ボンズ、マーク・マグワイア、ロジャー・クレメンスといった選手たちが選出されていない今、殿堂は正当ではないと考える人たちもいる。また、匿名での投票プロセスに否定的な声も多く、ファンは改革を要求している。

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全米野球記者協会(BBWAA)には現在、殿堂入りに対して投票権を持つ394人の会員がいる。各メンバーは毎年、その年の候補者たちの中から10人の選手に投票できる。ファンの不満は投票結果を公開するかどうかが各記者に委ねられている点にある。

この問題は、2025年殿堂入り選手を決める際の投票で再び表面化した。イチローがMLB史上2人目となる満場一致での選出に1票足りなかったためだ。

ここでは、イチローが満場一致で殿堂入りできなかった理由、投票者についての情報をまとめる。

イチローに投票しなかったのは誰?

投票結果の発表から数ヶ月経っても、誰がイチローに投票しなかったのかは分かっていない。

MLBの殿堂入り投票は、投票者が投票用紙を公開するチェックボックスにチェックを入れない限り、匿名とされる。投票者の中には投票用紙を自身のソーシャルメディアに投稿する人も多いが、その結果、特定の選手に投票しなかったことに対してその記者が怒り買うこともある。

全米野球記者協会は毎年、MLB殿堂入り投票の参加資格を有するすべての投票者のリストを公開している。残念ながら、投票内容は非公開にできるため、誰が投票内容を公開したかは一人ずつ検索していく必要がある。そうすることで、イチローに投票しなかった投票者は投票内容を公開しなかった投票者の中にいると絞り込まれる。

イチローの場合、321人の投票者が投票内容を公開している。つまり、イチローに投票しなかった謎の人物は、73人の匿名投票者の中に含まれることになる。

(殿堂入り投票の投票用紙を公開した 321 人の投票者全員がイチローに投票した。イチローに投票しなかった 1 人は謎のままだ。当然のことだが投票用紙は公開すべきだ。説明責任は重要だ。)

イチローは彼らしいやり方で、謎の非投票者に対していくつかのメッセージを送っている。殿堂入りしたイチローは当初、その投票者を自宅でのディナーに招待すると語っていた。しかし、日曜日の殿堂入りスピーチの中でイチローはその申し出は「期限切れになった」と言って撤回した。

(3000本安打、1シーズンで262本安打は、記者の方たちによって認められた功績です。1人を除いた皆さんによって)

満場一致で殿堂入りした選手は何人いる?

MLBの殿堂入り選手は、イチロー、C.C.サバシアが選ばれた2025年を含めて351名いる。そのうち、満場一致で選出されたのはたった1人しかない。ヤンキースのクローザー、マリアノ・リベラは、2019年に殿堂入りした際、提出された425票の投票用紙にすべてにその名前が含まれていた。

これまでにも満場一致で選出されるに値する選手は多くいたが、投票プロセスには欠点がある。投票者は投票できる選手の数を制限されているため、イチローのように殿堂入りが確実視される選手には投票を控える傾向がある。イチローと似た状況は、2020年にヤンキースのデレク・ジーターが選出された際にも起こっている。

殿堂入り投票での最高得票率は?

イチローはマリアノ・リベラ同様に満場一致で選出されることはできなかったが、それでもその投票率はMLB史上トップ・レベルとなっている。2025年の投票では394票のうち393票がイチローに投票された。その得票率は99.7%となり、ジーターと並んで史上2位の記録となっている。

選手チーム得票率年度
マリアノ・リベラヤンキース100% (425/425)2019
デレク・ジーター ヤンキース99.7% (396/397)2020
イチローマリナーズ99.7% (393/394)2025
ケン・グリフィー Jr.マリナーズ99.3% (437/440)2016
トム・シーバーメッツ98.8% (425/430)1992
ノーラン・ライアンレンジャーズ98.8% (491/497)1999
カル・リプケンJr.オリオールズ98.5% (537/545)2007

イチローのMLBでの成績 

シーズンチーム試合数安打本塁打打点打率WAR
2001マリナーズ157242869.3507.7
2002マリナーズ157208851.3213.6
2003マリナーズ1592121362.3125.6
2004マリナーズ161262860.3729.2
2005マリナーズ1622061568.3033.9
2006マリナーズ161224949.3225.3
2007マリナーズ161238668.3515.8
2008マリナーズ162213642.3105.4
2009マリナーズ1462251146.3524.7
2010マリナーズ162214643.3153.7
2011マリナーズ161184547.2720.6
2012マリナーズ/ヤンキース162178955.2831.7
2013ヤンキース150136735.2622.1
2014ヤンキース143102122.2840.9
2015マーリンズ15391121.229-1.1
2016マーリンズ14395122.2911.6
2017マーリンズ13650320.255-0.2
2018マーリンズ15900.205-0.5
2019Mariners2000.0000.0
Totals3 teams2,6533,089117780.31160.0

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原文:Who didn't vote for Ichiro? What we know about snub from Baseball Hall of Fame unanimous list
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)


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石山修二 Shuji Ishiyama

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。生まれも育ちも東京。幼い頃、王貞治に魅せられたのがスポーツに興味を持ったきっかけ。大学在学時に交換留学でアメリカ生活を経験し、すっかりフットボールファンに。大学卒業後、アメリカンフットボール専門誌で企画立案・取材・執筆・撮影・編集・広告営業まで多方面に携わり、最終的には副編集長を務めた。98年長野五輪でボランティア参加。以降は、PR会社勤務・フリーランスとして外資系企業を中心に企業や団体のPR活動をサポートする一方で、現職を含めたライティングも継続中。学生時代の運動経験は弓道。現在は趣味のランニングで1シーズンに数度フルマラソンに出場し、サブ4達成。

Teddy Ricketson

Teddy Ricketson is a Digital Content Producer at The Sporting News. He joined the team in 2024 after spending the last three years writing for Vox Media as part of its DK Nation/Network team. Teddy does his best to support the South Carolina Gamecocks and Carolina Panthers, but tends to have more fun cheering on the Atlanta Braves. In his free time, he loves spending time with his wife, Brooke, and their two dogs, Bo and Hootie.