1925年以来、『スポーティングニュース』(以下、SN)は毎年、野球界の最高峰に栄誉を授与してきた。
その始まりは100年前、SN初のMLBオールスターチームの選出だった。1936年には、最優秀選手、監督、フロント陣への個人表彰が追加され、やがて新人賞やカムバック賞も加わった。
SNのMLB各賞は、『同業者』による投票で選ばれる点が独特だ。選手賞は選手同士が投票し、監督賞は監督同士が、首脳陣(チーム編成責任者)への賞とオールスターチームについては首脳陣が選出する。野球は常に進化しているが、フィールドやクラブハウスで実際に活動する者たちに決定権を委ねる伝統は今も続いている。今年の投票には320人の選手、20人の監督(アメリカンリーグ11人、ナショナルリーグ9人)、22人の首脳陣が参加した。
今年の受賞者の顔ぶれを見ると、2025年の最大のサプライズが浮き彫りとなる。97勝を挙げたミルウォーキー・ブルワーズもその一つだ。新人賞には元ドラフト1巡指名選手2人選ばれたが、どちらの選手もシーズン前の予想には名前が挙がっていなかった。
なお、今回発表されていないSNのMLB年間最優秀選手賞については現地10月24日(金。日本時間25日土曜)に発表される。
それでは選手、監督、球団幹部による投票で選ばれた100周年記念となるSNの2025年MLB各賞を見ていこう。

アメリカンリーグ 最優秀新人賞:ニック・カーツ(アスレチックス)
アスレチックスの一塁手ニック・カーツは、2024年8月までプロの試合に一度も出場したことがなかった。そのわずか1年後、彼は野球界屈指の驚異的な打者となった。
カーツは開幕からマイナーリーグで猛打を奮い、4月にはアスレチックスでメジャー昇格に迫った。そこからの適応期間は短かった。ウェイクフォレスト大出身のカーツは、メジャー初出場から最初の23試合こそ打率.208、長打はわずか4本に留まったが、5月20日以降はスイッチが入ったかのようにOPS1.100を記録した。
カーツはアスレチックスで117試合に出場し、打率.290、36本塁打、OPS1.002を記録するなど、アメリカンリーグの他の新人王候補を圧倒した。特に7月には16試合で打率.500、10本塁打、OPS1.815という驚異的な数字を叩き出した。また7月25日のヒューストン・アストロズ戦では1試合4本塁打を含む6打数6安打の大活躍を見せた。1試合4本塁打はMLB史上20人目の快挙である。
カーツは昨年のメイソン・ミラーに続いて、2年連続でアスレチックスにSNのアメリカンリーグ最優秀新人賞をもたらした。ミラーは7月のトレードデッドラインにサンディエゴ・パドレスへ移籍したが、2026年以降の競争力を高めようとしているアスレチックスにあって、カーツが同じ運命をたどることは考えにくい。

ナショナルリーグ 最優秀新人賞:ケイド・ホートン(カブス)
シカゴ・カブスの先発ローテーションはシーズン序盤、ジャスティン・スティールが肘の故障でシーズン絶望となったことで早々に打撃を受けた。しかし5月にローテーション入りしたルーキーのケイド・ホートンがその穴を埋める活躍を見せた。
オクラホマ大出身の元ドラフト1巡目指名選手は、先発22試合、リリーフ1試合に登板して防御率2.67を記録した。118イニングで許した本塁打は10本、WHIPは1.09だった。
ホートンはシーズンが進むにつれて、その力を発揮していった。そして7月にスイッチが入ると、最後の12試合の先発では自責点1点以上を失った試合は1試合のみ、防御率1.03という素晴らしい結果を残した。三振を奪うタイプの投手ではないが、バッターにジャストミートさせないピッチングでポストシーズン進出を目指す中で信頼できるローテーション投手として活躍した。
10月は負傷のために登板できなかったが、素晴らしいレギュラーシーズンの活躍により、ホートンは2015年のクリス・ブライアント以来となるカブスからの最優秀新人賞選出となった。

アメリカンリーグ カムバック賞:ジェイコブ・デグロム(レンジャーズ)
シーズン開幕時点でテキサス・レンジャーズの懸念材料が打線よりも先発ローテーションだったことは今となっては信じがたい。最終的にレンジャーズ打線が苦戦したため、チームはポストシーズン進出を逃した。一方、先発陣ではジェイコブ・デグロムとネイサン・イオバルディの2人がともにオールスター級のシーズンを送った。
2024年はわずか3試合、過去2シーズン通算でも9試合しか先発登板していなかったデグロムは、2025年シーズンを通じてコンディションを維持しただけでなく、30試合に先発し、エース級の投球を見せた。過去に2度サイ・ヤング賞をデグロムは、172.2イニングで防御率2.97、WHIP0.92を記録し、9イニングあたりの四球は2個未満に抑え、185奪三振をマークした。
2018年や2021年にニューヨーク・メッツの一員としてマウンドで見せたデグロムの圧巻のピッチングとは今の姿は異なるかもしれない。だが、レンジャーズにとっては今のデグロム以上に充分満足しているはずだ。デグロムにとっても、今シーズンの復活は最終的に殿堂入りに向けた大きな後押しになるかもしれない。
デグロムは2019年のハンター・ペンス以来となるレンジャーズからのカムバック賞選出となった。

ナショナルリーグ カムバック賞:クリスチャン・イェリッチ(ブルワーズ)
ブルワーズの指名打者/外野手クリスチャン・イェリッチは2024年に、5年ぶりの好シーズンを送っていたが、背中の故障によりシーズンを途中で終えた。そして33歳を迎える2025年シーズンを前に背中の手術を受けながら、見事に復活を果たした。
元MVPのイェリッチは今季、コンディションを維持して150試合に出場し、ブルワーズがナショナルリーグ最高勝率をマークし、地区優勝を勝ち取る原動力となった。打率.264、29本塁打、103打点で、本塁打数は2019年以来、打点数は2018年のMVPシーズン以来の自己ベストを記録した。
特にシーズン最後の100試合では打率.295、20本塁打、OPS.862とナショナルリーグ屈指の数字を残している。この期間のブルワーズは64勝36敗、イェリッチが調子を上げる前の50試合は25勝25敗だったことを考えれば、その貢献度が分かる。
接戦の末、イェリッチは1978年のマイク・コールドウェル以来となるブルワーズからのカムバック賞受賞者となった。

アメリカンリーグ 最優秀監督賞:ダン・ウィルソン(マリナーズ)
2024年シーズン終盤にスコット・サービス監督が解任された際、シアトル・マリナーズはダン・ウィルソン氏に指揮権を委ねた。そこでチームは、シーズン最後の1か月を元メジャーリーグのキャッチャーであるウィルソン氏の試用期間とするのではなく、フルタイムの監督として任せた。それからわずか1年後、ウィルソン監督はマリナーズを24年ぶりの地区優勝に導き、球団史上初のワールドシリーズ出場まであと1勝という結果を残した。
ウィルソン監督とマリナーズは、予想外の方法で勝利を収めなければならなかった。というのも、期待された先発ローテーションはローガン・ギルバート、ジョージ・カービー、ブライス・ミラーが相次いで欠場するという予期せぬ状況に見舞われたからだ。カービーとミラーは2024年と比較して苦しいシーズンを送ったが、マリナーズは攻撃力を大幅に改善し、アメリカンリーグ西地区の首位争いに食らいつていった。
好不調の波のあるシーズンではあったが、9月下旬のロードのシリーズでスイープを達成するなど勝負どころでヒューストン・アストロズを圧倒し、AL西地区優勝を勝ち取った。
最終的にマリナーズが望んだような結末とはならなかったものの、ウィルソン監督は十分なマネジメント力を発揮し、2001年のルー・ピネラ監督以来となるマリナーズからの最優秀監督賞選出となった。ちなみにピネラ監督が受賞した2001年は、マリナーズは地区優勝を果たし、リーグチャンピオンシップ出場を果たした最後の年だった。

ナショナルリーグ 最優秀監督賞:パット・マーフィー(ブルワーズ)
パット・マーフィー監督は、MLBでのフルタイムの監督職のチャンスを長いこと待ち続けたが、ブルワーズの指揮を執った最初の2シーズンでその機会を最大限に活かし切っている。
66歳のマーフィー監督は昨年、コービン・バーンズを失いながらブルワーズをナショナルリーグ中地区優勝に導いた功績により、SNのナショナルリーグ最優秀監督賞を受賞した。そして今年、97勝65敗というMLBで最高の成績でシーズンを終えた。ミルウォーキーは常識を覆す29勝4敗という驚異的な連勝を見せ、夏の圧倒的な強さでナショナルリーグの頂点に躍り出た。
マーフィー監督は、エースのフレディ・ペラルタを筆頭に絶えず進化する先発ローテーションを構築するとともに、アブナー・ウリベとトレバー・メギルを躍進させることでデビン・ウィリアムズの抜けたブルペンを万全に保った。チームの夏の間の勢いはジャクソン・チョーリオがハムストリングの負傷で1か月間欠場しても気にならないほどだった。
ブルワーズは今季、マーフィー監督の下で2018年以来となるリーグチャンピオンシップシリーズ進出を果たした。ディビジョンシリーズではクレイグ・カウンセル前監督の率いるカブスを破った。ミルウォーキーのファンにとってはまさにカタルシスとなる勝利だったに違いない。
マーフィー監督は、2022年と2023年にアメリカンリーグの年間最優秀監督賞を受賞したブランドン・ハイド以来となるSNの年間最優秀監督賞の2年連続受賞を果たした。2023年にはカウンセルが同賞を分け合っているので、ブルワーズは過去3年連続でナショナルリーグの年間最優秀監督賞を獲得していることになる。

MLB最優秀幹部賞:マット・アーノルド(ブルワーズ)
チームの年俸総額がリーグ下位10位にある中でシーズン97試合に勝つには、チーム全体の力が必要だ。その功績の多くは、主要選手の退団を巧みに乗り切り、依然としてナショナルリーグのトップクラスで安定した成績を残せるチームを編成したマット・アーノルド・ゼネラルマネージャーの手腕によるものだ。
マーフィー監督同様、アーノルドGMも2023年シーズン後に主役へと昇格した人物だった。編成部長だったデビッド・スターンズ氏がニューヨーク・メッツへ移ったことで、アーノルドGMはミルウォーキーのフロントを率いることとなった。
アーノルドGMがシーズン中に獲得したクイン・プリースターとアンドリュー・ボーンの両選手はブルワーズの夏場の好調を支える重要な存在となった。ピッツバーグやボストンでは活躍できなかった元トッププロスペクトのプリースターは157.1イニングで防御率3.32という予想を覆す活躍を見せ、2024年にトバイアス・マイヤーズが予想外の活躍を見せたのと同様にミルウォーキーのローテーションを支えてみせた。
オフシーズンにデビン・ウィリアムズのトレードでニューヨーク・ヤンキースから獲得したケイレブ・ダービンは、新人ながら大きな貢献を果たした。また、2023年にアーノルドGMが編成トップになって以降、早々に獲得したチャド・パトリックは120イニング近くを堅実に投げきった。
ペラルタが契約最終年を前に今冬のトレード候補となる可能性が報じられるなど、ブルワーズの行く手は常に変化している。それでも、アーノルドGMがフロントを率いてからの2シーズンで示した手腕は、ブルワーズのファンに「彼が今後も予想外の場所から才能を見出し続ける」という確信を与えていることだろう。
アーノルドGMは1994年と1995年のジョン・ハート以来初めてSNの年間最優秀幹部賞に2年連続で選出された。
原文:AllSportsPeople MLB awards: Jacob deGrom, Nick Kurtz headline our 2025 winners
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)
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スポーティングニュース 2025 MLB賞
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