3000奪三振は、投手にとってみれば依然として聖杯のような存在だ。
この20年間で奪三振数は増加しており、投手は打者に対してかつてない優位性を保持しているように思われるが、3000奪三振という数字を達成するには、リーグ全体を見渡しても類い稀なまでの安定性、そして耐久性が求められる。
球速の向上は、同時に腕の故障の増加にもつながりかねない。3000奪三振を達成するためには、先発投手は相手打者のバットに空を切らせつつ、キャリアを通じて毎年投げ続けられる状態を保つ必要がある。当然ながら、3000奪三振のリストに名を連ねられるのは極めて限られた存在だ。
ここでは、MLBでこれまでに3000奪三振、2000奪三振を達成した投手たちを一覧で紹介する。
過去に3000奪三振を達成した投手は何人?
過去にMLBで3000奪三振を達成した投手は19人おり、カーショウが史上20人目の投手となった。
CLAYTON KERSHAW 💪
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現代の野球では奪三振率は高くなっているが、それでも3000奪三振に到達することは今後ますます困難になるかもしれない。というのも、5000イニング未満で3000奪三振を達成した投手は12人となっており、現代の野球ではその投球回数自体も難しい数字と考えられるからだ。
3000奪三振を達成した投手は以下の通りだ。
3000奪三振達成者一覧
直近で3000奪三振を達成したのは2019年のCC・サバシア(元ヤンキースほか)だった。
順位 | 選手名 | 奪三振数 | イニング | 年度 |
1 | ノーラン・ライアン | 5,714 | 5,386.0 | 1966-1993 |
2 | ランディ・ジョンソン | 4,875 | 4,135.1 | 1988-2009 |
3 | ロジャー・クレメンス | 4,672 | 4,916.2 | 1984-2007 |
4 | スティーブ・カールトン | 4,136 | 5,217.2 | 1965-1988 |
5 | バート・ブライレブン | 3,701 | 4,970.0 | 1970-1992 |
6 | トム・シーバー | 3,640 | 4,783.0 | 1967-1986 |
7 | ドン・サットン | 3,574 | 5,282.1 | 1966-1988 |
8 | ゲイロード・ペリー | 3.534 | 5,350.0 | 1962-1983 |
9 | ジャスティン・バーランダー* | 3,520 | 3532.1 | 2005-現在 |
10 | ウォルター・ジョンソン | 3,509 | 5,914.1 | 1907-1927 |
11 | マックス・シャーザー* | 3,468 | 2919 | 2008-現在 |
12 | グレッグ・マダックス | 3,371 | 5,008.1 | 1986-2008 |
13 | フィル・ニークロ | 3,342 | 5,404.0 | 1964-1987 |
14 | ファーガソン・ジェンキンス | 3,192 | 4,500.2 | 1965-1983 |
15 | ペドロ・マルティネス | 3,154 | 2,827.1 | 1992-2009 |
16 | ボブ・ギブソン | 3,117 | 3,884.1 | 1959-1975 |
17 | カート・シリング | 3,116 | 3,261.0 | 1988-2007 |
18 | CC・サバシア | 3,093 | 3,577.1 | 2001-2019 |
19 | ジョン・スモルツ | 3,084 | 3,473.0 | 1988-2009 |
20 | クレイトン・カーショウ* | 3,026 | 2831.0 | 2008-現在 |
* — 現役選手
※日本時間2025年8月9日現在
MLB史上最多奪三振数を誇るのは?
ノーラン・ライアンはMLB史上最多の5714奪三振を記録しており、2位のランディ・ジョンソンを839個上回っている。
ライアンの記録が破られることはまずないだろう。ライアンはMLBで27シーズンにわたってプレーしており、このこと自体が投手にとっては極めて困難なことと言える。さらにライアンは280イニング以上投げたシーズンが5回あり、これもまた現在のMLBではまず難しい数字と言えるだろう。

ノーラン・ライアン
ライアンは1960年代から90年代、4つの年代にわたってプレーした。
1966年にメッツでデビューすると、1968年にはチームの先発ローテーションの一角として頭角を現した。1970年代の大半をエンゼルスで過ごし、1980年代はアストロズでプレーした後、キャリアの最後をレンジャーズで過ごし、そのキャリアを通じて7度目のノーヒットノーランを達成した。
健康かつ長いキャリア、そして耐久性が、ライアンの通算奪三振記録を可能にした。ライアンはキャリア通算で773試合に先発登板し、5386イニングを投げた。これらの数字は、現代のMLBで達成することを想像するだけで難しい。また、肘の手術は現代のMLBでは先発投手について回るものとなっているが、ライアンは22シーズン連続で20試合以上に先発し、うち15シーズンは30試合以上に先発した。
ライアンのキャリア通算奪三振率は9イニングあたり9.5個で、ブレイク・スネル(ドジャース)の11.2、クリス・セール(ブレーブス)の11.1、ジェイコブ・デグロム(レンジャーズ)の10.8、ゲリット・コール(ヤンキース)の10.4、カーショウ(ドジャース)の 9.7など、現在のエース投手たちと比べると低い数字となっている。だが、ここに挙げた現役投手のうち3人はトミー・ジョン手術を受けており、スネルは先発で6イニングを超えて投げることが稀で、カーショウはキャリア後半に多くの故障に悩まされている。
現在の投手たちと比べると、ライアンはまさに『ユニコーン』のような存在であり、その耐久力は彼の記録を今後も維持し続けることになるだろう。
2000奪三振達成者一覧
2000奪三振を達成した投手はMLB史上90人おり、その中で現役投手は7人(ジャスティン・バーランダー、マックス・シャーザー、クレイトン・カーショウ、クリス・セール、ゲリット・コール、チャーリー・モートン、ダルビッシュ有)となっている。
カーショウはこのリストで20位につけている。
順位 | 選手名 | 奪三振数 |
1 | ノーラン・ライアン | 5,714 |
2 | ランディ・ジョンソン | 4,875 |
3 | ロジャー・クレメンス | 4,672 |
4 | スティーブ・カールトン | 4,136 |
5 | バート・ブライレブン | 3,701 |
6 | トム・シーバー | 3,640 |
7 | ドン・サットン | 3,574 |
8 | ゲイロード・ペリー | 3.534 |
9 | ウォルター・ジョンソン | 3,509 |
10 | ジャスティン・バーランダー* | 3,497 |
11 | マックス・シャーザー* | 3,451 |
12 | グレッグ・マダックス | 3,371 |
13 | フィル・ニークロ | 3,342 |
14 | ファーガソン・ジェンキンス | 3,192 |
15 | ペドロ・マルティネス | 3,154 |
16 | ボブ・ギブソン | 3,117 |
17 | カート・シリング | 3,116 |
18 | CC・サバシア | 3,093 |
19 | ジョン・スモルツ | 3,084 |
20 | クレイトン・カーショウ* | 3,010 |
21 | ザック・グレインキー | 2,979 |
22 | ジム・バニング | 2,855 |
23 | ミッキー・ロリッチ | 2,832 |
24 | マイク・ムシーナ | 2,813 |
25 | サイ・ヤング | 2,803 |
26 | フランク・タナナ | 2,773 |
27 | デビッド・コーン | 2,668 |
28 | チャック・フィンリー | 2,610 |
29 | トム・グラビン | 2,607 |
30 | ウォーレン・スパーン | 2,583 |
31 | ボブ・フェラー | 2,581 |
32 | ティム・キーフ | 2,564 |
33 | コール・ハメルズ | 2,560 |
34 | ジェリー・クーズマン | 2,556 |
35 | ハビア・バスケス | 2,536 |
36 | バートロ・コロン | 2,535 |
37 | フェリックス・ヘルナンデス | 2,524 |
38 | クリス・セール* | 2,528 |
39 | A.J.バーネット | 2,513 |
40 | クリスティー・マシューソン | 2,507 |
41 | ジョン・レスター | 2,488 |
42 | ドン・ドライスデール | 2,486 |
43 | ジャック・モリス | 2,478 |
44 | マーク・ラングストン | 2,464 |
45 | ジム・カート | 2,461 |
46 | サム・マクダウェル | 2,453 |
47 | アンディ・ペティット | 2,448 |
48 | ジェイミー・モイヤー | 2,441 |
49 | ルイス・ティアント | 2,416 |
50 | デニス・エカーズリー | 2,401 |
51 | ケビン・ブラウン | 2,397 |
52 | サンディ・コーファックス | 2,396 |
53 | チャーリー・ハフ | 2,362 |
54 | ロビン・ロバーツ | 2,357 |
55 | アーリー・ウィン | 2,334 |
56 | ルーブ・ワッデル | 2,316 |
57 | フアン・マリシャル | 2,303 |
58 | ジョン・ラッキー | 2,294 |
59 | ドワイト・グッデン | 2,293 |
60 | レフティ・グローブ | 2,266 |
61 | ゲリット・コール* | 2,251 |
62 | エディ・プランク | 2,246 |
63 | トミー・ジョン | 2,245 |
64 | ジェームズ・シールズ | 2,234 |
65 | ジム・パーマー | 2,212 |
66 | ジェイク・ピービー | 2,207 |
67 | アダム・ウェインライト | 2,202 |
68 | デビッド・ウェルズ | 2,201 |
69 | グローバー・アレクサンダー | 2,198 |
70 | ヴァイダ・ブルー | 2,175 |
71 | カミロ・パスクアル | 2,167 |
72 | ティム・ウェイクフィールド | 2,156 |
73 | デニス・マルティネス | 2,149 |
74 | ロイ・ハラデイ | 2,117 |
75 | チャーリー・モートン* | 2,124 |
76 | ケビン・ミルウッド | 2,083 |
77 | ボボ・ニューサム | 2,082 |
78 | ティム・ハドソン | 2,080 |
79 | デビッド・プライス | 2,076 |
80 | ライアン・デンプスター | 2,075 |
81 | フェルナンド・バレンズエラ | 2,074 |
82 | マディソン・バンガーナー | 2,070 |
83 | ダジー・バンス | 2,045 |
84 | ダルビッシュ有* | 2,030 |
85 | ランス・リン | 2,015 |
86 | リック・リーシェル | 2,015 |
87 | オーレル・ハーシュハイザー | 2,014 |
88 | ダン・ヘイレン | 2,013 |
89 | キャットフィッシュ・ハンター | 2,012 |
90 | アンディ・ベネス | 2,000 |
* — 現役選手
※日本時間2025年8月9日現在
この先3000奪三振を記録する投手は誕生するか?
MLBのチームは2016年に史上初めて1試合平均8三振を記録した。以来この数字は毎シーズン8三振を上回っている。2010年代後半以降、増加ペースは鈍化しているが、この高い奪三振率で3000三振に達するのはこれまで以上に簡単になるのだろうか?
耐久性の問題や投球数制限を考えるとそうはならないだろう。数多くの三振を記録してきた投手には球速が低く、キャリア通算で4000イニングや5000イニングを投げることができた時代の投手が多く、そのころはトミー・ジョン手術も一般的ではなかった。
球速とスピン率の向上は奪三振の増加をもたらしたが、同時に怪我のリスクも高めた。投手のキャリアは短くなる傾向にあり、チームも投手の腕をこれまで以上に保護する傾向にある。こうした要因が必然的に3000奪三振のようなマイルストーンを達成する可能性をせばめていく。
かと言って、カーショウが最後の3000奪三振の記録を達成する投手になるわけでもないだろう。奪三振数が高くなっている今、力のある投手がコンディションを維持できれば、3000奪三振に到達する可能性は常に存在する。
例えば、クリス・セールは2020年から2022年までの3年間でわずか11先発しかしていないにもかかわらず、キャリア後半に急成長を遂げたことで3000奪三振に到達する可能性が出てきた。セールは2024年に225奪三振でNLサイ・ヤング賞を受賞し、現在3000奪三振到達まであと500奪三振を切っている。確実というわけではないが、もしセールが故障なく39歳まで投球を続けられれば、3000奪三振は達成可能だ。
3000奪三振は今後、どの投手にとっても非常に達成困難な記録となるだろう。しかし、過去に達成した人数を考えれば、それは当然のことかもしれない。
原文:MLB pitchers with 3,000 strikeouts: Where Clayton Kershaw will rank on baseball's all-time career Ks list
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)
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