ルー・ゲーリッグのメジャーリーグデビューからすでに100年以上の歳月が経過している。だが、彼のレガシーとその影響力は今もなお様々な形で感じられている。
メジャーリーグ(MLB)史上初めてその背番号が永久欠番となった選手としても知られるゲーリッグは、ヤンキースで2,130試合連続出場という歴史的な鉄人記録を樹立した。しかし、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患ったことでそのキャリアと人生には突然の終止符が打たれた。
MLBでは現在、ゲーリッグの偉業を称える日として『ルー・ゲーリッグ・デイ』を定め、彼のALSとの闘いならびに現在この病気と闘う個人や家族への認知向上、研究支援を行っている。
ルー・ゲーリッグ・デイとは?
ルー・ゲーリッグ・デーは、ゲーリッグの生涯とレガシーを称えつつ、ALSの認知度向上を目的としたMLBの年間行事である。
最初のルー・ゲーリッグ・デーは2021年に開催され、以来MLBの年間スケジュールにおける重要な一日となっている。
1995年にゲーリッグの連続試合出場記録を破ったカル・リプケンJr,(元オリオールズ)は、1年目の開催の際に『MLB.com』の取材に対して次のように語った。
「私たちには皆、個人としてできることがあります。しかし、私たちが皆一致団結し、30チームが一つになってこの日を制定することで、そこから生まれる力は驚くべきものとなるでしょう」
ルー・ゲーリッグ・デイはいつ?
ルー・ゲーリッグ・デーは毎年6月1日、2日とされている。各チームはこの日の前後の日程でルー・ゲーリッグ・デー/ALS認知向上のイベントを行う。
- 5月28日(水) マイアミ@サンディエゴ
- 6月3日(火) ヒューストン@ピッツバーグ
- 6月3日(火) シカゴ・カブス@ワシントン
- 6月3日(火) フィラデルフィア@トロント
- 6月3日(火) ボルティモア@シアトル
- 6月6日(金) トロント@ミネソタ
- 6月8日(日) シカゴ・カブス@デトロイト
- 6月9日(月) シカゴ・カブス@フィラデルフィア
- 6月9日(月) シアトル@アリゾナ
6月2日は、ゲーリッグがヤンキースの先発一塁手としてデビューし、2,130試合連続出場という歴史的な記録を開始した日である。また、1941年6月2日に37歳の若さで亡くなった命日でもある。
MLBがルー・ゲーリッグ・デイで行うことは?
この日はMLBの32チームすべてがさまざまな形でゲーリッグの追悼を行う。
2025年シーズンは、選手たちはゲーリッグを偲ぶため彼の背番号4をモチーフとしたパッチをユニフォームに着けるとともに、世界中のALS患者を応援する「4 ALS」と記されたリストバンドを着用する。
#LouGehrigDay will once again be commemorated around MLB this weekend, June 1st and 2nd.
— MLB (@MLB) May 29, 2025
Players will wear this No. 4 patch and these wristbands to mark the day and help raise awareness for ALS. pic.twitter.com/Gc2nd2gQFl
(#LouGehrigDayは、今週6月1日と2日にMLB全体で今年も行われる。選手たちは、この日を記念するとともにALSの認知度向上を支援するため、この4番のパッチとリストバンドを着用する)
フィールド上のアクションに加え、リーグはALSへの支援と病気に関する研究を支援するための情報、リソースをファンに提供している。また2025年のルー・ゲーリッグ・デーを前にドジャースとヤンキースのシリーズでは、ALSと闘病中のMLBのアナウンサー、サラ・ラング氏の声が『サンデー・ナイト・ベースボール』内の特集のナレーションに使用された。
In addition to on-field tributes, the league provides information and resources for fans to support ALS and research around the disease. During the Yankees' trip to Los Angeles ahead of Lou Gehrig Day in 2025, the voice of MLB's Sarah Langs, who is battling ALS, was used to narrate a feature on "Sunday Night Baseball."
The voice of @SlangsOnSports narrated this feature on Sunday Night Baseball thanks to AI and Karl Ravech paid her a wonderful tribute ahead of Lou Gehrig Day encouraging support to fight ALS. pic.twitter.com/OQw5BAIqEG
— Awful Announcing (@awfulannouncing) June 2, 2025
(サラ・ラングの声が『サンデー・ナイト・ベースボール』のこの特集のナレーションに使用された。AI活用とカール・ラベッチ氏の尽力により、ルー・ゲーリッグ・デーを前にALSとの闘いを支援するよう呼びかける素晴らしいトリビュートとなった)
ゲーリッグが患ったALSとは?
ALSは筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)と呼ばれ、脳と脊髄の神経細胞に影響を及ぼす進行性の神経変性疾患である。
ALS協会による説明では、筋肉への栄養供給の不足が筋肉の萎縮や衰弱を引き起こすとしている。定義の「側索」の部分は、脊髄の神経細胞が筋肉の信号伝達と制御を担当する領域を指す。
その領域の脊髄が変性して起こる瘢痕化や硬化が「硬化(sclerosis)」と呼ばれる。
この病気は1869年に初めて特定されましたが、1941年6月2日にゲーリッグが亡くなったことでで世界的に知られるようになった。そのため、ALSは「ルー・ゲーリッグ病」としても知られている。
現時点でALSの進行を止める治療法や有効な治療法はないもの、一部の治療法は病気の進行を遅らせるのに効果を発揮している。
ルー・ゲーリッグ・デイはどのような形でALSの認知向上・研究を支援している?
ルー・ゲーリッグ・デイにおけるALS支援のアクションは多岐にわたり、MLBの各チームも多くのリソースを提供している。
MLBによる「4 ALS」イニシアチブのウェブサイトには、ALS研究を推進する全国的な組織と地域組織のリストが掲載されており、その中には各チームが支援する組織も含まれている。
またこのサイトでは、ALS研究を進めるマサチューセッツ・ゼネラル・ホスピタルへの寄付を紹介するほか、『ルー・ゲーリッグ・デイ・オークション』を開催し、その収益をALSの研究に寄贈する。
ちなみにオークションには、大谷翔平の直筆サイン入り『1/1 Lou Gehrig Day Topps Now』も出品されていて、6月3日時点で1万60ドル(1ドル142円換算で約142万8520円)の値がつけられている(オークション終了日は現地12日)。
ルー・ゲーリッグの有名な『この世で最も幸せな男』のスピーチとは?
ゲーリッグは引退から数週間後、ワシントン・セネターズとのダブルヘッダーの間にヤンキー・スタジアムでのスピーチを行った。映像に捉えられたのはその演説の中のわずか4文のみだったが、のちに書き起こされた文章は多くの人々によって野球界の「ゲティスバーグ演説」と称えられている。
For the past two weeks, you've been reading about a bad break.
Today, I consider myself the luckiest man on the face of the earth. (cut) When you look around, wouldn't you consider it a privilege to associate yourself with such fine-looking men as are standing in uniform in this ballpark today? ... that I might have been given a bad break, but I've got an awful lot to live for. Thank you.
(この2週間、皆さんは(私に降りかかった)不幸な出来事について読んできたことでしょう。
ですが、私は今日、この世で最も幸せな男だと感じています。(中略)周囲を見渡せば、今日この球場でユニフォームを着て立っている素晴らしい男性たちと関われたことこそが特権ではないでしょうか?…確かに私は不幸な出来事に遭いましたが、生きていく意味は山ほどあります。ありがとう。)
ルー・ゲーリッグはいつ亡くなった?
ゲーリッグはALSによる合併症のため、1941年6月2日に死去した。享年37歳だった。
ルー・ゲーリッグはいつ殿堂入りした?
ゲーリッグは1939年、特別選出で殿堂入りを果たした。
ゲリッグの生前には公式の殿堂入り式典は行われなかったが、2013年に殿堂入りを果たした他の10名の故人と共に特別追悼式典で追悼された。
ルー・ゲーリッグの通算成績
- MLB出場:17シーズン(1923〜1939)
- 出場試合数:2,164試合
- 安打数:2,721安打
- ホームラン:493本
- 打点:1,995打点
- 打率:.340
原文:What is Lou Gehrig Day? How MLB honors Yankees legend and raises awareness for ALS each year
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)
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