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消えた違和感、山本由伸が残したもう1つの“財産”…歴史的偉業が生んだ新語「中0日」

尾辻剛 Go Otsuji

消えた違和感、山本由伸が残したもう1つの“財産”…歴史的偉業が生んだ新語「中0日」 image

Jiji Press

力投するドジャース・山本由伸

■ドジャース・山本由伸、第6戦先発→第7戦救援登板の衝撃

大きかった違和感が、今やすっかりなくなった。ドジャース・山本由伸投手が驚異的な活躍で世界一に導いたワールドシリーズ。山本は11月1日(日本時間2日)に敵地で行われたブルージェイズとの第7戦で救援登板し、シリーズ3勝目を挙げてワールドシリーズ連覇に大きく貢献した。前日の第6戦では先発して6回1失点。連日の快投で「中0日」という“新語”が生まれた。

ドジャースは9回に4-4の同点に追いついたが、その裏にピンチを招く。1死一、二塁と一打出ればサヨナラ負けの場面で登板したのが山本だった。直後に各メディアが山本の登板を速報。「Yahoo!ニュース」で取り上げられていた原稿の見出しに「中0日」の文字があった。

日本のプロ野球では1週間に1度先発登板する中6日などは普段からよく見かける。メジャーリーグでは先発投手は中4日や中5日が基本。山本の直前に救援マウンドに立っていたのは第5戦に先発したブレーク・スネル投手で、移動日を含めて中2日だった。

短期決戦では先発投手が救援待機するケースがある。スネルのように中2日の場合もあれば、中1日だってあり得る。ただ、前日に登板した投手が再びマウンドに上がる際は、これまでは一般的に「連投」というフレーズを使用してきた。

「連投」ではなく「中0日」。過去に新聞社の編集部門経験がある記者は当初、強い違和感を覚えた。赤字(編集上の誤り)、もしくは誤用ではないか、とも感じたほどである。新聞社の友人に聞いた話では当日、編集部門でも「『中0日』はおかしい。『連投』ではないのか」といった意見が出たという。

■定着した「中0日」…「連投」よりインパクト強い?

よく考えたら「中0日」という言葉は間違っていない。これまでも使用していたメディアはあったが、世間的に定着しなかった。2日連続登板は救援投手では頻繁にあるケースで、今回は見慣れた「連投」より、あまり見たことがない「中0日」の方がインパクトが強いと感じた人が多かったのではないだろうか。各メディアでは少しずつ「中0日」派が増えていった。

上記の友人の話によると、編集部門で「中0日」という見出しをつけた際に、取材部門から疑問の声もあったそうだ。だが、SNSでの拡散もあって今や「中0日」が主流になりつつある。

「中0日」の山本は9回1死満塁のピンチを切り抜けると延長に入っても続投。2回2/3を無失点に抑えて2年連続の世界一を達成した。

ワールドシリーズ3勝は2001年のランディ・ジョンソン(ダイヤモンドバックス)以来24年ぶり14人目。ランディ・ジョンソンも今年の山本と同様に2、6戦目に先発し、7戦目が救援登板だったが、いずれも本拠地だった。全て敵地で3勝を挙げたのは史上初めてで、その快挙は称えられて当然である。さらに、新しい言葉まで生み出してくれた。

時代によって言葉は少しずつ変化し、ふとした瞬間に新しい言葉が生まれる。使えるフレーズの選択肢が増えるのは、言葉を扱う仕事をしている人間にとってはありがたいことである。今回の「中0日」は山本の偉業が浸透を後押ししたのは間違いない。それだけ歴史的な出来事だった。

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Editorial Team