【凱旋門賞 2025】クロワデュノールらが挑戦表明! 日本馬の“悲願”に追い風となる今年3つの変更点とは?

加藤雅大 Masahiro Kato

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Jiji Press

今年の日本ダービーを制したクロワデュノールが、10月5日に行われる凱旋門賞(G1・芝2400m)への挑戦を表明。さらに、天皇賞・春 2着のビザンチンドリームも、9月7日に行われる前哨戦、フォワ賞(G2・芝2400m)からの挑戦を明かしており、今年も「日本競馬の悲願」にかける熱気が高まりつつある。

これまで日本調教馬による最高着順は、1999年のエルコンドルパサー、2010年のナカヤマフェスタ、2012・2013年のオルフェーヴルの2着。1969年のスピードシンボリ以来、半世紀以上にわたり頂点には届いていない。

しかし、今年の凱旋門賞は例年とは様相が異なる。日本馬にとって追い風となる“3つの変更点”から、悲願達成への期待がこれまで以上に高まっている。

クロワデュノール 北村友一騎手と悲願へ

今年ダービー馬に輝いたクロワデュノールが、凱旋門賞挑戦を正式に表明。手綱を取るのは、デビューからコンビを組んできた北村友一騎手。継続騎乗で挑む大舞台に、多くのファンから期待の声が上がっている。

本番へ向けて、同じくパリロンシャン競馬場で行われる、9月14日プランスドランジュ賞(G3・芝2000m)に出走予定。東京スポーツ杯2歳S→ホープフルS、皐月賞→日本ダービーと、これまでも”ひと叩き”でパフォーマンスを一段と上げてきたタイプだけに、現地での実戦は大きな意味を持つ。

さらに、クロワデュノール自身の血統背景も大きな魅力。母ライジングクロスは現役時代に英オークス2着など欧州で活躍した実績の持ち主。欧州特有の馬場への適性を備えた血統背景も加味すれば、夢の実現へ向けた条件は整っている。

ビザンチンドリーム 名手との再タッグで悲願なるか

もう1頭、凱旋門賞への挑戦を表明しているのは4歳牡馬ビザンチンドリーム。今春のサウジアラビア遠征で、レッドシーターフハンデキャップ(G2・芝3000m)を勝利。国内復帰戦となった天皇賞・春では、勝ち馬ヘデントールとアタマ差の2着と、惜しくもG1タイトルには届かなかったが、能力を存分に発揮した。

陣営は、前哨戦・フォワ賞から挑むローテーションを表明。すでに海外で結果を出している点は、クロワデュノールを上回る大きなアドバンテージと言える。

前走天皇賞・春で2着に導いたA.シュタルケ騎手は、ドイツでリーディングを10回獲得している名手。今年オークスをカムニャックで制するなど、日本の競馬ファンにもお馴染みの存在だ。A.シュタルケ騎手自身は2011年にデインドリームで凱旋門賞を制しており、経験は申し分なし。現在鞍上は調整中だが、引き続きタッグとなればビザンチンドリームにとって大きな追い風となる。

日本馬に“追い風”となる3つの変化とは? 

これまで幾度となく日本馬が跳ね返されてきた凱旋門賞。しかし、2025年の開催に向けて、その風向きが少しずつ変わろうとしている。

今年4月、フランス競馬を統括する「フランスギャロ」の関係者が来日し、JRA本部で関係者向けの説明会を開催。そこで発表された“3つの変更点”が、日本調教馬にとって大きな追い風となる可能性がある。

① 輸送費の補助が実現

まず最も注目されたのが、「日本馬への輸送費補助」の導入。

2025年の凱旋門賞に予備登録を行った日本調教馬の中から、最大2頭に対してフランスギャロが渡航費を負担するというもの。

これまで、海外遠征にかかる費用は馬主にとって大きな負担の一つだった。特に欧州遠征はコストがかさむため、挑戦を見送るケースも少なくなかった。この補助制度により、有力馬が凱旋門賞に挑戦しやすくなる。

今年の凱旋門賞で登録を行った日本馬6頭のうち、現時点で出走を表明したのは、クロワデュノールとビザンチンドリームの2頭。シンエンペラーやアロヒアリイなど、他の登録馬の動向も注目されるが、現状ではこの2頭が補助制度の恩恵を受ける可能性が高い。

② 前哨戦の開催が1週前倒し

もうひとつの注目点は、凱旋門賞の主要な前哨戦であるフォワ賞などのレース日程が、例年よりも1週間早まったこと。

これにより、前哨戦から凱旋門賞までの間隔が「中2週」から「中3週」へと広がり、出走馬にとってコンディション調整の余裕ができる。特にフォワ賞から凱旋門賞へ臨む、ビザンチンドリームにとっては、疲労のリカバリーや状態維持の面で非常に大きなメリットとなる。

③ パリロンシャン競馬場の馬場改修

そして日本馬にとって最大の変化が、「パリロンシャン競馬場の馬場改修」。

これまで日本馬が凱旋門賞で苦戦してきた最大の理由が、重く力の要る芝状態。時計の速い日本とは適性の異なる、パリロンシャン特有の“タフすぎる馬場”に泣かされてきた歴史は、枚挙にいとまがない。

しかし今年、パリロンシャン競馬場の馬場は7月のパリ大賞後から工事に着手。フォルスストレート約450m部分の排水工事を行い、過度な湿り気や水捌けの悪さが改善されているという。

かねてから”馬場適性”が最大の課題とされてきた日本馬にとって、こうした環境の変化は大きな意味を持つ。「日本馬には不利」と言われてきたパリロンシャンの芝が少しでも中立に近づくことで、夢の実現が現実味を帯びてくるかもしれない。

地元フランスの強豪馬ソジーら 強力ライバル勢

7月1日時点で、イギリスの大手ブックメーカー「ウィリアムヒル」が発表している凱旋門賞の単勝オッズによると、日本ダービー馬クロワデュノールは17.0倍で5番人気タイ、ビザンチンドリームは67.0倍という評価。

現段階での1番人気(11.0倍)は、地元フランスの4歳牡馬ソジー。昨年の凱旋門賞では、日本発売で1番人気に支持されながら4着に敗れたが、今年はガネー賞・イスパーン賞とG1レースを2連勝中。パリロンシャン競馬場でのG1勝利がすでに3つあるという点でも、地元馬ならではの“地の利”を活かせる存在だ。

2番人気タイ(13.0倍)には、前走G3で圧勝したアイルランドの4歳牝馬エストレンジ、さらに今年の英オークスを制したミニーホークといった牝馬が続く。いずれも日本馬にとっては乗り越えるべき厚い壁となるだろう。

日本競馬の“悲願”達成へ 今年は追い風が吹いている

凱旋門賞に挑む日本馬にとって、2025年はこれまでと異なる“希望”の年となるかもしれない。

また、現在出走を予定しているクロワデュノールとビザンチンドリームに続く形で、新たな有力馬が出走を表明する可能性も残されており、日本勢の勢力が今後さらに厚みを増すことも期待される。

日本競馬にとって届きそうで届かなかった“夢”が、今年こそ現実になる時が来るのか。

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加藤雅大 Masahiro Kato

スポーティングニュース日本版コンテンツライター。愛知県出身。大学卒業後、テレビ局でスポーツ番組の制作に携わり、幅広い競技に関わる中でスポーツの奥深さに魅了される。現在はスポーツライターとして活動しており、競馬を中心に、野球やサッカーも担当。レースや試合の展望はもちろん、データや戦術、駆け引きといった要素にも注目。多角的な視点からスポーツの魅力を伝える。