ボッタスとペレスがキャデラックF1に最適な理由

Ben McCarthy

浄見耕志 Koushi Kiyomi

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08262025

2026年に新たに参戦するキャデラックのF1チームは、グランプリ優勝経験とランキング2位の実績を誇るセルジオ・ペレス、バルテリ・ボッタスの両名をドライバーに迎える。

数週間にわたり発表が待たれていたなか、新たなアメリカのチームは声明で次のように発表した。

「ボッタスとペレスは、経験、リーダーシップ、そして技術的な洞察力を兼ね備えた比類のない組み合わせだ。これにより、キャデラックF1チームは世界最高峰のレースシリーズに参戦するにあたり、万全の態勢で臨むことができる」

「通算500戦以上のグランプリ出走と100回を超える表彰台、さらに豊富な開発面での知見を持つ2人は、参戦初日からチームの競争力の基盤を築くうえで中心的な役割を担う」

過去10年間で、両ドライバーはチームがタイトルを獲るために必要なものを理解してきた。ボッタスはメルセデスのコンストラクターズタイトル5連覇に貢献し、ペレスは2022年と2023年にレッドブルのタイトル獲得に貢献した。

F1に新規参戦するチームにとって、現代的な働き方や組織運営、コミュニケーション、そして実行力を身につけることは非常に重要だ。このスポーツは決して簡単ではなく過酷だが、経験豊富な2人のドライバーがいれば、その成長をより早く加速させることができるだろう。

ゼネラルモーターズの支援を受けるこのチームは、短期間でレースを制したり、中位争いをしたりできるというわけではない。チームは現実的な目標を掲げている。複数年契約と見られる経験豊富なベテランドライバー2人の存在は、2026年以降も含め、その目標を着実に達成するうえで大きな助けとなる。

キャデラックは、2026年と2027年のランキングで下位に甘んじる可能性が高い。しかし、新規参戦チームを率いるドライバー陣の存在により、目標達成に必要な経験を積むプロセスが整う。この経験は、チームにとって大きな助けとなり得る。

もちろん、役割はそれだけにとどまらない。そもそも2人はスピードのあるドライバーだ。ボッタスは2014年に飛躍の年を迎え、一部では将来のワールドチャンピオン候補と目され、メルセデス所属時には10勝を挙げている。

このフィンランド人ドライバーは、2017年にワールドチャンピオンのルイス・ハミルトンと60ポイント差以内でシーズンを終え、自身のベストパフォーマンス時には、F1界のトップドライバーと十分に渡り合える力があることを証明した。

一方、ペレスはここ5年近くにわたりF1中団勢力のトップに君臨していた。最後尾からの見事な逆転優勝を果たした2020年のサクヒールGPは、ペレスの実力を示す象徴的な一戦だった。

たとえ2人の全盛期が過ぎていたとしても、彼らの経験と価値は確かなものだ。

たしかに、2人とも2024年末にそれぞれのシートを失った。しかし、新規参戦で実績のないチームが2026年に下位に甘んじる可能性が高いことを考えれば、これ以上のドライバーラインナップは望めないだろう。

フェルスタッペンやルクレールのような、より優れたドライバーは確かに存在する。しかし、彼らがほぼ確実に下位に沈む新規参戦チームに移籍することは考えにくい。

このコンビは安全策であり、やや退屈に映るかもしれない。チームは若手のアメリカ人ドライバーや有望な新鋭を起用せず、保守的な布陣となったためだ。

若手ドライバーは、2人よりも純粋なスピードでは勝るかもしれない。しかし、同じく経験の浅いチームとでは、マシン開発やコミュニケーションに苦労する可能性がある。

たとえ2人が長期的に在籍しなくても、今後数年間でのチームの立ち位置を考えれば、まずは基盤を整えることが重要になる。

2026年は、キャデラックにとって学習と成長の年となる。ここで技術面や運営面の厳しさが試される。このチームはゼロからのスタートであり、トレンドを作ることが目的ではない。まずは既存の流れを把握し、理解することが重要だ。その過程で経験が生きるはずだ。

原文:Why Bottas and Perez makes total sense for Cadillac's new F1 team
翻訳・編集:浄見耕志(スポーティングニュース日本版)

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Ben McCarthy

Ben McCarthy is a freelance sports journalist, commentator and broadcaster. Having specialised his focus on football and Formula One, he has striven to share and celebrate the successes of both mainstream and local teams and athletes. Thanks to his work at the Colchester Gazette, Hospital Radio Chelmsford, BBC Essex and National League TV, he has established an appreciation for the modern-day rigours of sports journalism and broadcasting.

浄見耕志 Koushi Kiyomi

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。東京生まれ・東京育ち。スポーツとの出会いは、幼少期に夢中で観戦した大相撲。以来、欧州サッカーやF1を中心に幅広く観戦し、競技そのものだけでなく、その背景や文化にも強い関心を持つ。映画や音楽をはじめカルチャー全般を日常的に吸収し、雑誌文化にも親しんでいる。