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衝撃のラスベガスGPは劇的結末への序章? 年間優勝争いの潮目を変えた規則違反

河村大志 Taishi Kawamura

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2025年のF1世界選手権は、シーズン終盤のネバダ州ラスベガスで誰もが予想し得なかった転換点を迎えた。ランド・ノリスによるタイトル獲得が秒読み段階に入ったと見られていた状況から一転、マックス・フェルスタッペンの逆転タイトルの可能性が出てきたのだ。

フェルスタッペンに訪れた最大の好機

ラスベガスGPを迎える前の時点でパドックを支配していた空気は、「フェルスタッペンの王座陥落は時間の問題」というものであった。ポイントリーダーのノリスに対し49ポイントという大差をつけられていたフェルスタッペン。彼自身、メディアに対して「タイトル獲得には相当な運が必要であり、自分にできることはあまりない」と語るほど、その表情には諦念が漂っていた。

実質的に彼のタイトル防衛は絶望的であり、レッドブル陣営の関心も、現実的な目標であるコンストラクターズランキング2位の確保に移りつつあったのが実情だ。

しかし、タイトル獲得の可能性が完全に無くなるまで、何が起こるかわからない。奇しくも今大会はこのスポーツの面白さであり厳しさを再確認するレースとなった。

ラスベガスGP決勝レース後の車検で状況が一変。最新のドライバーズランキングにおいて、首位のノリスは390ポイントで変わらないものの、2位のオスカー・ピアストリと3位のフェルスタッペンが366ポイントで並ぶという、極めて緊迫した状況になった。

一度は手放しかけたタイトルの可能性がライバルの失点と自身の勝利により、再びフェルスタッペンの手元に引き寄せられた形だ。

残すはカタールGPとアブダビGPの2戦。次戦カタールGPはスプリントレースもあるため、最大58ポイント獲得できる。とはいえ、フェルスタッペンが残り全てのレースで優勝したとしても、ノリスが3レースとも2位に入れば逆転することはできない。

依然ノリス有利に変わりはないが、万が一、今回同様にノリスがノーポイントに終わりフェルスタッペンが優勝すれば、ランキング首位の座が一気に入れ替わる。いずれにしても予断を許さない状況だ。

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混戦を招いた「9mm」

この劇的な状況変化の震源地となったのは、ラスベガスGP決勝後のパルクフェルメだ。レースは2番グリッドからスタートしたフェルスタッペンが、ポールポジションのノリスが犯したミスをつきターン1でオーバーテイク。そのままトップでチェッカーを受け、今季6勝目を飾った。

優勝は逃したものの、コース上で2位と4位でフィニッシュしたマクラーレンの2台。しかし、レース後に悪夢のような結末が待っていた。

【こちらも】 Formula 1公式YouTubeチャンネルの「マクラーレンW失格」リポート動画(設定で「自動翻訳」→「日本語」がオススメ)

レース後の車検において、ノリスとピアストリの両マシンに技術規則違反が発覚。問題となったのは、車体底面後部に装着される「スキッドブロック」の摩耗度合いであった。

F1の技術規定では、この板の厚さはレース後も規定値を満たしていなければならないが、両名のマシンは規定の最小厚さである9mmを下回っていたことが判明したのだ。

結果としてノリスとピアストリは決勝結果から除外され、本来得られるはずだった貴重なポイントをすべて失うことになった。この裁定により、メルセデスのジョージ・ラッセルが2位に、同じくメルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリが3位に繰り上がっている。この「9mmの摩耗」が、シーズンの行方を決定づける最大の分岐点となったことは間違いない。

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歴史は繰り返すのか?追う立場の優位性

ラスベガスGPの結果を受け、三つ巴の戦いとなったタイトル争い。F1の歴史において、複数名によるタイトル争いは追う立場のドライバーが栄冠に輝くことが多い。直近でいうと2007年と2010年がそれに当たる。

2007年はマクラーレンのフェルナンド・アロンソとルイス・ハミルトン、フェラーリのキミ・ライコネンとフェリペ・マッサの4名がシーズンを通してタイトル争いを展開。残り3戦となる第15戦日本GPでマッサがタイトル争いで脱落し、ハミルトン、アロンソ、そしてライコネンの三つ巴の争いとなった。

この時点でランキング首位のハミルトンが107ポイント、ランキング2位のアロンソが95ポイント、ランキング3位のライコネンが90ポイント。当時のポイントシステムは優勝が10点、2位が8点、3位が6点、以下4位5点、5位4点、6位3点、7位2点、8位1点だったため、ハミルトンが圧倒的有利だった。

今シーズンのノリス以上にポイントが離れていたわけだが、最終的にこの年タイトルを獲得したのはランキング3位のライコネンだった。

2010年は最終戦を迎えた時点でフェラーリのアロンソが246ポイントでトップ、2位は238ポイントのマーク・ウェーバー、3位は231ポイントのセバスチャン・ベッテルのレッドブル勢、マクラーレンのハミルトンは222ポイントで4位につけ、ポイントシステムは現在と同じという状況。

レース前、ランキングトップのアロンソが3度目の栄冠に輝くかに思われたが、決勝レースではアロンソとフェラーリはランキング2位のウェバーに意識を向けすぎたことにより戦略を誤ってしまった。その隙をついたランキング3位のベッテルが優勝し逆転でタイトルを決めている。

さらに遡ると1986年もネルソン・ピケ、ナイジェル・マンセル、そしてアラン・プロストによる三つ巴の最終決戦が繰り広げられた。この年もタイトルを獲得したのは、ランキング3位と追う立場のプロストだった。

歴史を見ても追う立場のドライバーが勝つことが多いF1。マクラーレンを率いている代表のアンドレア・ステラは2007年と2010年の逆転劇を当事者として経験している。2007年には歓喜の、そして2010年には失意の涙を流したステラにとって、このジンクスは意識せずにはいられないだろう。

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Staff Writer