テレンス・クロフォードが2025年のスポーティングニュース『年間最優秀男子ファイター』に選出

Dom Farrell

石山修二 Shuji Ishiyama

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2025年の男子ボクシング界は、階級を代表する王者がこぞって「休眠状態」の一年だった。

テレンス・クロフォードは昨年1年間にわずか1試合しか行っていない。すでに6年連続でその状況だ。しかしその1戦で クロフォードはスーパーミドル級王者サウル・『カネロ』・アルバレスを見事に王座から引きずり下ろし、3階級無敗王者となる歴史的瞬間を刻んだ。待っただけの価値のある勝利だった。

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カネロ撃破の余韻の中、クロフォードは引退を宣言 した。証明すべきことは何も残っていない完璧な幕引きだった。

一方、今世紀を代表するパウンド・フォー・パウンド(PFP)のトップファイター、オレクサンドル・ウシクの試合は今後あと何度見られるだろうか。

ウクライナの巨匠は昨年、ウェンブリースタジアムでダニエル・デュボアと対戦し、5ラウンドまでにダウンを奪ってKO勝利を収める一方的な試合を展開した。2023年の初対戦時よりも早いラウンドで、そして圧倒的内容で英国の誇るヘビー級ファイターを打ち負かしたのだ。

この勝利でウシクは再び主要タイトルを統一した。2025年にウシクが行った試合もクロフォード同様、この7月のロンドンでの一戦のみだった。

その後、ウシクはWBA王座を返上し、2026年にはヘビー級タイトルがさらに分散していくだろうと見込まれる中、ウシクは元WBC世界王者のデオンテイ・ワイルダーとの対戦を目指している。

アンソニー・ジョシュアとタイソン・フューリーにそれぞれ2勝ずつ挙げた経歴に、色あせたとはいえ、アメリカのノックアウトアーティストを加えることは、一時代を代表する最強ビッグマンのウシクにとってライバルたちからの勝利をコンプリートする意味で魅力的なのだろう。

ライトヘビー級では、ドミトリー・ビボルが2月に宿敵アルトゥール・ベテルビエフへのリベンジを果たした。リヤドで行われたロシア人同士の対戦は、またもや壮絶な12ラウンドの死闘となった。だがビボルは2025年後半を怪我の療養に費やしたため、その後の決着戦はまだ実現していない。

PFPのトップファイターの中で唯一例外的存在だったのは、日本が誇るスター、井上尚弥だ。井上は一年の間に4連勝を飾り、スーパーバンタム級を支配し続けた。1月には急遽代役として出場したキム・イェジュンを4ラウンドで退け、続くラスベガスでのラモン・カルデナス戦ではダウンを喫するも8ラウンドの激闘の末に勝利を掴んだ。

ムロジョン・アフマダリエフは、『ザ・モンスター』井上が君臨する4つ目の階級、スーパーバンタム級で最も手強い試練となるだろうと予想されていた。しかし実際には、才能あるウズベキスタン人ボクサーも井上の前に一方的な判定負けを喫した。そして12月にはアラン・ピカソがアフマダリエフと同様の運命をたどった。ピカソは最終ラウンドまで持ちこたえたものの、井上に傷一つつける可能性は見せられなかった。

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Matchroom Boxing/Mark Robinson

現代において無敵の王者がこうしたスケジュールをこなす事は称賛に値する。そしてこの実績は、井上を2025年のボクシング界最高峰と称するに足る根拠となる。シンプルに考えれば、観客が求めるものを繰り返し提供し続けたボクサーに対して報いるべきなのだろう。井上は出現するすべての挑戦者を井上が迎え撃った。この特別な時代をファンはいつまでも思い返すことだろう。

しかし冷静に考えれば、驚異的な試合数を除けば、井上は今年やるべきことを全てやったに過ぎない。アフマダリエフ戦を除けば、井上は全ての対戦相手に対して圧倒的に勝る選手だった。そのアフマダリエフもゴングが鳴ると試合前の意気込みをすぐに失っていた。

これに対し、クロフォードはかつてのPFPキングであるカネロ相手に驚くべきことを成し遂げた。確かに、今のカネロはスーパーミドル級を支配し始めた頃の、無敗の王者たちを次々と倒していった当時の姿ではない。それでもクロフォードの偉業は歴史的なものだ。

もしこれが彼がリングに上がる最後の試合になるのだとすれば、なんと素晴らしい引退劇だろうか。『バド』はトーマス・ハーンズ、シュガー・レイ・レナード、オスカー・デ・ラ・ホーヤ、フロイド・メイウェザーJr.、マニー・パッキャオに並ぶ、男子ボクサーとして6人目の5階級制覇を果たした。そうそうたる面々だ。

2014年にライト級でリッキー・バーンズを破って初めて世界チャンピオンになったクロフォードは、3つの階級で無敵のチャンピオンとなった1938年の偉大なヘンリー・アームストロング以来初の選手だ。

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Terence Crawford

歴史的背景だけでは年間最優秀選手賞の理由にはならないが、自身が最初に王座に就いた階級より33ポンド(約15キロ)重い階級で史上最高の選手と対戦した事実は驚異的な偉業として評価されるべきだ。カネロはその夜、悪い試合をしたわけではない。戦術、技術、実行力の面で別次元の男と対峙しただけだ。クロフォードはカネロ相手に逃げることをしなかった。ミドルレンジで戦い、カネロを鮮やかに何度も打ち抜いた。

注目すべきは、階級を上げていった選手たちが最も重い階級で世界タイトルを勝ち取った試合は、概して有利なマッチメイキングによってもたらされた点だ。デ・ラ・ホーヤはバーナード・ホプキンスとの統一戦のため、フェリックス・シュトルムから判定を盗んでWBO世界ミドル級タイトルを奪い、さらにシェーン・モズリー戦の惨敗で底が見えてしまったアントニオ・マルガリートは、勢いに乗るパッキャオと空位のWBC世界スーパーウェルター級王座の間に挟まれた餌食に過ぎなかった。

これに対し、クロフォードはカネロという世代を代表する傑物への最大の挑戦に立ち向かい、最高の試合を生み出した。これこそが偉大さの表れであり、彼が2025年のスポーティングニュース選出「年間最優秀男子ファイター」に選ばれた理由だ。これは彼にとって二度目の受賞となる。

スポーティング・ニュース選出 年間最優秀男子ファイター

ドミトリ・ビボル(2022) | テレンス・クロフォード(2023) | オレクサンドル・ウシク(2024) | テレンス・クロフォード (2025)

原文:Why Terence Crawford won AllSportsPeople' Men's Fighter of the Year 2025
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)

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