10月26日(日)に霞ヶ浦文化体育会館(茨城県土浦市)で行われた高校バスケットボール選手権(ウインターカップ2025)茨城県予選会の男子決勝戦で、土浦日大がつくば秀英に87-71で勝利し、7年連続優勝 を果たした。
この試合に誰よりも強い気持ちで臨んだ選手がいる。土浦日大3年のエースガード、渡部駆流(わたなべかける)だ。
今年3月に左膝前十字靭帯断裂と半月板損傷という重傷を負った渡部は、その後約7か月の間、公式戦から離れることになった。その間、チームは関東大会、インターハイと県大会の決勝戦で宿敵つくば秀英に敗れ、王座を逃し続けた。負傷後、キャプテンの座を夏目悠良に譲り、渡部はマネージャーとして仲間のサポートをしながら、オフコートで血の滲むようなリハビリを続けてきた。
そして、10月上旬についにチーム練習に復帰。その後、2週間あまりで開幕したウインターカップ茨城県予選会で公式戦のコートに立ち、見事全国大会の切符を手にした。
名門・土浦日大を率いる佐藤豊文ヘッドコーチをして「渡部をこの予選で使えたのが最大の勝因」とまで言わしめた 172cmの司令塔の復活は、今季、大一番で敗れ続けていたチームを奮い立たせる大きな要因となった。
最後の冬を前に甦ったエースに、つくば秀英との決勝戦後、試合を振り返ってもらうとともに、大怪我からの復活、現在のコンディションの状態、全国大会への思いなどを語ってもらった。

Takuma Oikawa
嬉しい気持ちと、感謝の気持ちでいっぱい
――県大会を制した今の気持ちは。
渡部: 本当に嬉しい気持ちと、感謝の気持ちでいっぱいです。
――今日の試合の勝因は。
渡部: 23番(飯田渚颯)と5番(渡邊脩希)のリバウンドですね。この2人が体を張った2点プレイ(ゴール下でのショット)を決めてくれたのが勝因かなと思います。
――出場時間が制限されるなか、どんなプレイをしようと思っていた?
渡部: とにかく試合に出たら前からディフェンスに付いて、泥臭いプレイをやろうと思っていました。あとは1、2年生が本当にがんばってくれていたので、そこのメンタルケアをしようと心掛けていました。
――ベンチからもよく声をかけていた。第4クォーターもお互いに点の取り合いになっていたが、渡部選手の3ポイントショットや速攻からのアシスト、ドライブからのフリースロー獲得などもあってチームに勢いがついた。自身の最終クォーターのプレイはどうだった?
渡部: 試合開始からとにかく打てたら打とうと思っていたんですけど、あの場面(試合残り6分半の3ポイント)でちょうどよくボールが回ってきて、打って決めることができました。入った瞬間、良かったなと思いました。
――シュートタッチは良かった?
渡部: シュートタッチは今大会通して良くなかったんですけど、決勝戦で大事なシュートを決めることができて…日頃からリバウンドや練習を手伝ってくれる人たちがいるのですが、そういう人たちのお陰でこうして決めきることができて良かったです。

Takuma Oikawa
シュートを外してもあいつらがリバウンドを取ってくれると信じていました
――今日の試合では5番の渡邊選手や23番の飯田選手がゴール下でがんばっていたが、そういう選手がいるとシュートも打ちやすい?
渡部: そうですね。シュートを外してもあいつらがリバウンドを取ってくれると信じていました。気持ちよく打たせてもらっていたというのがあるので、ゴール下で体を張ってくれた2人には本当に感謝しています。
――エンドワン(3ポイントプレイ)だったり、ファウルを誘うようなプレイもあったが、フィジカルなプレイは怖くなかった?
渡部: そうですね、この決勝戦まではそういうプレイをしないで来ていたので、少しだけ『大丈夫かな』というのもあったんですけど…でも、もう最後の大会だし、命をかけて戦っていたので、そんなの関係なく『やってやろう』って思ってやっていました。
――つくば秀英に敗れたインターハイの県予選決勝はどんな気持ちで見ていた?
渡部: 本当に「勝ってくれ」という気持ちでずっと見ていて、(マネージャーとして)サポートもしていたんですけど、一歩及ばなくて。インターハイに負けたあとはもうウインターカップ予選しか見ていませんでした。それで今日ああいういいゲームができたというのが、今までやってきたことの成果だと思います。
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リハビリは毎日体が死にそうな感じでやってました
――膝を怪我したのはいつ?
渡部: 3月9日に切っちゃって14日に手術しました。そこから7か月半くらいでの復帰です。左足の前十字靭帯と半月板です。
――今の状態は何割くらい?
渡部: 今日の試合はもう9割、10割に近いくらい力は出せていました。トレーナーさんや先生方が毎週のように病院に連れて行ってくれて、トレーニングとかケアとかしっかりやってくれていたので、本当に感謝しかないです。
――靭帯断裂から約7か月半で復帰。リハビリは相当大変だったのでは?
渡部: いや、まあ…トレーニングは周りが「え?」ってなるくらいの量をやってきて、毎日体が死にそうな感じでやってました。
――試合で頻繁に交代していたのは怪我の影響?
渡部: そうですね、一回の交代で3~4分を目安に、それを何回も、というイメージでした。
――短い時間で交代しながらプレイする難しさがあったのでは?
渡部: 今までは休める時間がなかったんですけど、今は休める時間帯があるということで、コートに出たらフレッシュな気持ちでやろう、っていうのは心掛けてやっていました。シュートタッチは今大会はあまり良くなかったんですけど、最後、決めきることができたので、まあ、良かったなとは思っています。

Takuma Oikawa
サポートしてくれている人たちに結果で恩返ししたい
――シュートには怪我の影響は感じる?
渡部: 影響はありますね。やっぱりまだ左右ズレが多くて、怪我する前と感覚が全然違います。でも、これからまた1か月チーム練習を抜けてトレーニングがあるので。12月に入ったらコート復帰する予定なので、それまでに左右差をなくしていきたいです。そうしたらサポーターも外せるので。
――負傷後、キャプテンを途中で夏目くんに代わってもらったり、周りの選手たちの成長をどう感じている?
渡部: 自分は半年以上コートから離れていて、一緒にプレイすることはなかったんですけど、その間にきつい練習とかもあったと思いますが、それを全員で乗り越えてここまでやってきてくれました。そこに(復帰した)自分がポンっと入っただけなので、自分がチームに合わせるという形だったんですけど、うまくフィットできて、周りの人も自分に合わせてくれて、本当に感謝しています。
――ウインターカップに向けて状態も上がっていくと思うが、全国大会に向けては。
渡部: 最終目標はもちろん優勝ですけど、最低でもメインコート(ベスト8以上の試合が行われるコート)に立ちたいです。本当に今までいろんな人にサポートしてきてもらっているので、そういう人たちに結果で恩返ししたいと思っています。
※試合後の囲み取材における一問一答。読みやすくするため質疑の順番や言葉の表現に最小限の編集を加えています。
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