野球の母国アメリカが初戴冠…第4回(2017年)WBCを振り返る|侍ジャパンは再び準決勝で散る

永塚和志 Kaz Nagatsuka

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2017年3月、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が戻ってきた。

大会も4回目となり、当初は感じられなかったような熱量がアメリカや中米を含めた多くの国々と彼らのファンたちから感じられるようになってきた。

そのなかで、前回大会で優勝を逃した日本代表チームは、2大会ぶりの王座奪還を目指したが届かず、準決勝敗退という結果に終わった。

多くのメジャー組が不参加

日本代表“侍ジャパン”は2013年10月から常設化され、第3回大会で監督選考に難航した反省もふまえて元福岡ソフトバンクホークス等のスラッガーだった小久保裕紀氏を早々に監督に据えた。そして、2015年の国際野球大会「プレミア12」や2016年秋の強化試合などで経験を積ませながら、このWBCへ向けて準備をしていった。

だが、選手選考はメジャーリーガーなしで臨まざるをえなかった前回大会同様に苦戦。アメリカ球団側が出し渋った事情もあり、上原浩治(シカゴ・カブス)や田中将大(ニューヨーク・ヤンキース)、ダルビッシュ有(テキサス・レンジャーズ)らが軒並み不参加となった。最終的にメジャーからは青木宣親(ヒューストン・アストロズ)だけが参加することとなり、国内のプロ野球(NPB)からも大谷翔平(北海道日本ハムファイターズ)が前年の日本シリーズでの足首の故障を理由に辞退を表明している。

この大会では第2回、3回大会で一部採用されたダブルエリミネーション方式(同一ラウンド内で2度敗戦した時点で敗戦)から、第1回の総当りの方式へと戻っている。

強豪国に苦戦も、6連勝で決勝ラウンドへ

1次ラウンドでは4番の筒香嘉智(横浜DeNAベイスターズ)と5番の中田翔(北海道日本ハム)がそれぞれ2本塁打ずつをマークした日本。初戦のキューバ戦を11-6で勝利し、2戦目のオーストラリア戦ではやや打棒が湿るも、先発の菅野智之(読売巨人)と変則的な投手を複数枚入れた投手陣が相手を封じ、4-1で勝利。次戦の中国戦も7-1で快勝した。

しかし2次ラウンドに入ると、気を緩められない試合が続く。初戦の相手、オランダはザンダー・ボガーツ(ボストン・レッドソックス)やケンリー・ジャンセン(ロサンゼルス・ドジャース)などメジャーリーグ球団や、ウラジミール・バレンティン(東京ヤクルトスワローズ)などNPBでも活躍する選手を多く揃えるチームだ。

1-1で迎えた3回表。日本は中田の3点本塁打などで一挙4点を奪うも、その裏、オランダもバレンティンのツーランで4点を返し同点に。9回表にも、1点ビハインドのオランダは二死からの安打で追いついてみせる。

しかし、最後は日本が薄氷の勝利を収める。無死一、二塁から始まる延長タイブレークルールの11回表。途中出場の鈴木誠也(広島東洋カープ)の犠打で二、三塁とすると、中田が左翼前へ運ぶ2点適時打で勝ち越し。最後は抑えの牧田和久(埼玉西武ライオンズ)が締めた。

次戦のキューバ戦も、日本は先発の菅野が4回までに4失点と乱調で苦戦を強いられる。しかし5回に筒香の適時打などで2点を、6回に伏兵・小林誠司(巨人)に適時打で1点を返し同点にすると、8回に山田哲人(東京ヤクルト)からこの日2本目となる2点本塁打が出るなどで3点を挙げ、8-5の辛勝を収めた。

次戦のイスラエル戦は、先発・千賀滉大(福岡ソフトバンク)が5回1安打、無失点の快投。打線も13安打と爆発し、日本が1次ラウンドから無傷の6連勝で、決勝ラウンド進出を決めた。

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敵地で天候にも恵まれず…またしても侍ジャパンは準決勝敗退

そして勝負の決勝ラウンド。日本は準決勝、ドジャースタジアム(米カリフォルニア州ロサンゼルス)でアメリカと対峙する。ところが、試合前からそぼ降る雨が止まず、試合開始は大幅に遅れた。両軍ともシートノックもできずに試合に入り、同球場に慣れていない日本にとっては不利な条件でのスタートだった。

それでも、2次ラウンドで不安定だった菅野がすばらしい投球を披露。球の威力も制球も良く、相手をねじ伏せる。だが4回表。日本は守備の名人、二塁手・菊池涼介(広島東洋)が相手のゴロ打球を雨でぬかるんだ芝の影響でうまくさばけずに失策。その後、菅野がアンドリュー・マカチャン(ピッツバーグ・パイレーツ)へ適時打を許し、先制される。

日本は6回裏。菊池によるソロ本塁打で同点とするが、打線はアメリカ投手陣の動く球を打ちあぐねて凡打を重ね、追加点が取れない。

8回表。日本は連続安打を許し一死二、三塁とされて打席にはのちにオリックスバファローズでプレーする、アダム・ジョーンズ(ボルティモア・オリオールズ)を迎える。ジョーンズは三塁手、松田宣浩(福岡ソフトバンク)の前にゆるいゴロを打つが、菊池同様、雨の影響があったか、松田はこれをうまく捕ることができず、三塁走者が本塁に生還(記録上は三塁ゴロ)。アメリカに勝ち越されてしまう。

日本は9回を3人で打ち取られ、1-2の敗戦。前回大会に続いてまたも準決勝で散った。

開催4回を数え、大会のレベルも底上げ

決勝戦はプエルトリコを破ったアメリカが8-0で圧勝し、野球の母国の面目を保つ形で初めてのWBC優勝を達成した。大会MVPにはその決勝で先発登板し、6回まで被安打ゼロと好投したマーカス・ストローマン(トロント・ブルージェイズ)が獲得。ベストナインには、日本からは千賀が選ばれた。

日本は3人が打率3割超えで本塁打も11本と悪くなく、小林など当初は打棒では期待されていなかった者も活躍。総じてやや安定感を欠いた投手陣を補った。

なかでも筒香が4番の重圧をよそに、7試合中5試合で安打を放つなど、打率.327、3本塁打、8打点と勝負強い打撃で1、2次ラウンドの全勝を牽引した。

また上述の通り、準決勝アメリカ戦の菅野の投球には鬼気迫るものがあり、アメリカのジム・リーランド監督をして「彼はメジャーリーグ級の投手」と言わしめた。この時点で27歳だった菅野はのちに模索したメジャー移籍はうまくいかなかったが、アメリカのマウンドで印象に残るパフォーマンスをした。

しかし、冒頭で触れたように他国がWBCの価値を見出し、より注力してくるようになった。メジャーリーガーの辞退が相次いだ事情もあったとはいえ、日本が簡単に勝てる試合は確実に減ってきた。

第4回WBC侍ジャパンメンバー

位置背番号氏名所属投 打生年月日
投手10松井 裕樹東北楽天ゴールデンイーグルス左 左1995.10.30
投手11菅野 智之読売ジャイアンツ右 右1989.10.11
投手12秋吉 亮東京ヤクルトスワローズ右 右1989.3.21
投手14則本 昂大東北楽天ゴールデンイーグルス右 左1990.12.17
投手15宮西 尚生北海道日本ハムファイターズ左 左1985.6.2
投手16大谷 翔平北海道日本ハムファイターズ右 左1994.7.5
投手17藤浪 晋太郎阪神タイガース右 右1994.4.12
投手19増井 浩俊北海道日本ハムファイターズ右 右1984.6.26
投手20石川 歩千葉ロッテマリーンズ右 右1988.4.11
投手30武田 翔太福岡ソフトバンクホークス右 右1993.4.3
投手34岡田 俊哉中日ドラゴンズ左 左1991.12.5
投手35牧田 和久埼玉西武ライオンズ右 右1984.11.10
投手41千賀 滉大福岡ソフトバンクホークス右 左1993.1.30
投手66平野 佳寿オリックス・バファローズ右 右1984.3.8
捕手9炭谷 銀仁朗埼玉西武ライオンズ右 右1987.7.19
捕手22小林 誠司読売ジャイアンツ右 右1989.6.7
捕手27大野 奨太北海道日本ハムファイターズ右 右1987.1.13
捕手37嶋 基宏東北楽天ゴールデンイーグルス右 右1984.12.13
内野手2田中 広輔広島東洋カープ右 左1989.7.3
内野手3松田 宣浩福岡ソフトバンクホークス右 右1983.5.17
内野手4菊池 涼介広島東洋カープ右 右1990.3.11
内野手6坂本 勇人読売ジャイアンツ右 右1988.12.14
内野手13中田 翔北海道日本ハムファイターズ右 右1989.4.22
内野手23山田 哲人東京ヤクルトスワローズ右 右1992.7.16
外野手1内川 聖一福岡ソフトバンクホークス右 右1982.8.4
外野手7青木 宣親ヒューストン・アストロズ右 左1982.1.5
外野手8平田 良介中日ドラゴンズ右 右1988.3.23
外野手25筒香 嘉智横浜DeNAベイスターズ右 左1991.11.26
外野手51鈴木 誠也広島東洋カープ右 右1994.8.18
外野手55秋山 翔吾埼玉西武ライオンズ右 左1988.4.16

*カッコ内の所属は当時のもの


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永塚和志 Kaz Nagatsuka

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール、陸上など多岐にわたる競技を担当。現在はフリーランスライターとして活動している。日本シリーズやワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある。