「野球でいえば打率4割」の記録を目標に掲げる富永啓生
レバンガ北海道の富永啓生が、Bリーグでの新たな挑戦を前に大きな具体的目標を掲げた。
9月22日、Bリーグ開幕を前に東京都内で開催されたティップオフカンファレンス(記者会見&配信イベント)で明かされた稀代のサウスポーの今季の目標は、「3ポイント確率50%達成」という極めて高いものだった。
司会を務めた佐々木クリス氏と副島淳氏もその数字に興奮を隠せず、「野球でいえば打率4割」(※日本プロ野球で達成者不在の未踏記録)と表現したほどだ。
実際、Bリーグの過去9シーズンで『5割の壁』を越えたのは、2021-2022シーズンの3ポイントシュート賞受賞者である狩野祐介(当時名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、現ライジングゼファー福岡)の52.9%(74/140)のみだ。NBAを見渡しても、シーズンを通じて50%の大台を超えた選手は歴史上数えるほどしかおらず、そのほとんどが現在よりも3ポイントラインが60cmほど近かった時代に記録されたものだ。プロバスケットボールの世界で3P成功率50%を達成することがいかに難しいかは、普段からバスケットを見ている人であればよくご存知だろう。
また、バスケットボールでは超一流シューターの基準として『50-40-90』という数字が使われる。これはフィールドゴール(2点シュート)成功率50%、3ポイントシュート成功率40%、フリースロー成功率90%を意味する。つまり、3ポイントシュートは成功率40%が一流の水準であり、50%はもはや非現実的といっていい数字だ。
ましてや、3ポイントシュート専任のような役割ではなく、2点シュートも含めた全エリアからのシュートと得点を期待される富永のような選手にとっては、「あまりにも高すぎる」と言われても仕方のない目標かもしれない。
だが、富永は初めてプレイするBリーグでいきなり未達リスクの極めて高い数字を掲げてみせた。
これは単なるビッグマウスではない。当の富永本人は至って本気だ。

富永啓生の揺るぎない自信と覚悟
司会の佐々木氏から自信のほどを問われると、「自信はあります」と即答し、「アテンプト(試投数)も増えてくると思うんですけど、50%決めることでオフェンスでチームに勢いを与えることができると思うので、フォーカスしてがんばっていきたいなと思います」と、気負う様子は微塵もない。
ネブラスカ大学時代は3シーズンで37.4%(178/476)、Gリーグ(インディアナ・、マッドアンツ)では46.9%(15/32)、8月のFIBAアジアカップでは42.3%(11/26)という成績だったことを考えると、やはり決して簡単ではないだろう。もちろん、それは富永自身がよくわかっているはずだ。
それでもこのような大きな目標を口にしたのは、今季にかける覚悟ゆえと想像する。
富永が日本のチームに所属してプレイするのは、日本代表を除けば、桜丘高校(愛知県)を卒業した2019年以来、およそ6年ぶりだ。2024年春に米国大学リーグNCAAのネブラスカ大学を卒業した後、昨季はNBA Gリーグでプロデビューを飾ったものの、まとまった出番を得ることはできず、NBAでプレイする夢を叶えることはできなった。そこで一旦日本に戻り、今季はBリーグで再出発を図ることとなった。
それだけに、もう一度NBAに挑戦するためにも、それに相応しい圧倒的な数字を自らに課したのだろう。これくらいの目標を達成できなければ、NBA入りを実現することはできない、という気持ちの現れなのかもしれない。
多くの選手が具体的数字を目標として公言することを避ける風潮があるなか、堂々と掲げられる富永の胆力はさすがだ。しかも、もしかしたら本当に達成できるのではないか、と思わせる力が富永にはある。
開幕戦で対戦する名古屋ダイヤモンドドルフィンズのシューター、今村佳太に富永の印象について問うと、間髪入れずに「3ポイントシュート」と断言するほど、富永=3ポイントシュートという印象はすでに定着している。
それだけ、ディフェンスのマークも当たりも厳しくなるだろうし、実際、開幕戦でマッチアップする可能性のある今村は、富永対策として「気持ちよくプレイさせないようにすることが大事」「ステップバックスリーを消したい」と、対戦に向けて守るイメージをすでに膨らませ始めている様子だった。
「自分が点を取らないと、という責任感ももちろんある」
いずれにせよ、富永は高い目標を掲げながらも、そのプレッシャーに押しつぶされるような選手ではない。出番を得られずに苦しんだ昨季があるからこそ、Bリーグでの新たな挑戦を心から楽しみにしている。
「(レバンガでは)間違いなく自分としてはすごくやりやすいシチュエーションでやらせてもらっていると思います。去年までは1本外したらもう本当に終わり、という状況だったんですけど、今はそういう状況ではないので、気楽にシュートを打てています。だけど、その分自分が点を取らないと、という責任感ももちろんある。それも含め、すごく楽しみにながらやれていると思います」
渡米から6年を経てついにBリーグの舞台に立つシューターの挑戦は、10月4日(土)、敵地ながら自身の地元でもある愛知県名古屋市のIGアリーナで幕を開ける。
【動画】Bリーグティップオフカンファレンス2025-26(9月22日配信)
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