ブレックスアリーナ宇都宮で行われたB1第14節(12月13、14日)、東地区首位を走ってきた宇都宮ブレックスとケガで主力を欠く三遠ネオフェニックスの対戦は、初戦は宇都宮が95対90、2戦目は三遠が93対79で勝利を収め、1勝1敗のイーブンで終えた。
三遠は初戦26得点、2戦目24得点をマークしたデイビッド・ヌワバが牽引車となったが、ベンチからチームを支えた21歳の湧川颯斗(はやと)の活躍も光った。
初戦では一時19点のリードを奪うなど前半だけで55点を奪った三遠だったが、細かいミスから主導権を宇都宮に与えてしまい、後半は35点にとどまり逆転負け。湧川自身は12分51秒の出場で11得点と悪くはなかったが、宇都宮の反撃のきっかけを作った小川敦也との1対1ではシュートブロックを受けるなど、悔しさが残る結果となった。
「チームとして、ディフェンスのちょっとしたミスで自分たちがメルトダウンして、相手に主導権を奪われる試合が続いています。速いトランジションがチームの持ち味ですが、あくまでディフェンスのチーム。オフェンスでいい時間帯があるのは、ディフェンスから(いい流れを)持ってこれた結果だと思います。ですので、なんとかちょっとしたミスを防げるようにしたいです」
2戦目はその反省を生かし、コート上の5人が集中力を持って自分たちのバスケットに徹し宇都宮を圧倒。湧川も積極的なプレーでチームに流れを引き込み、初戦より2倍近い21分30秒プレー。得点は12得点と初戦とそれほど変わらなかったが、「ー4」から「+12」に上昇した「貢献度」(選手が出場時間帯のチームの得失点差)は、そのまま勝利のカギとなった証と言える。
「自分で答えを探し始めたところ」(大野HC)
湧川は11月、FIBAワールドカップ2027アジア予選Window1対チャイニーズタイペイに臨む日本代表候補として直前合宿に招集。最終的なメンバー入りは果たせなかったが、A代表の合宿に身を置くことで大きな刺激を受けてきた。
「初めてBリーグのシーズン中に代表招集を受けたので、空いた時間には自分の頭の中で(三遠で)やるべき役割を継続して確認したりもしていました。
合宿ではトップクラスの選手とプレーしたことで自信がついた一方、いろんな課題も見つかりました。代表、三遠でそれぞれ違う課題も参加する前よりも明確に見えてきたのですが、共通した課題として感じたのはボール運びの部分。代表合宿では、(SR渋谷のジャン・ローレンス・)ハーパージュニアさんなど、トップクラスのディフェンダー相手にターンオーバーを喫した時などに、それはすごく感じました」
また、バイウィーク明けに先発ガードとして起用され始めた19歳のルーキー・児玉ジュニアの存在もいい刺激となっているという。
「ジュニアのディフェンスの姿にはいい刺激を受けています。彼をはじめ先発陣がトーンセットしてくれる(試合における戦術の方向性を定める)ので、ベンチからコートに出る自分たちは彼ら以上にエナジーを持ってプレーすることを心がけています」
湧川が目指しているのは、得点力を備えたポイントガード。そのイメージ像をより高いレベルで実践する意味でも、あらゆる面をレベルアップする必要性を感じている。
「個人的な部分では、チームでも、代表でも、今はまだ突出した何かがない状態だと思います。でも、自分の強みは得点を取る部分。そこが“自分の武器”と高いレベルでも胸を張って言うためにも、細かい課題を克服して、全体的にレベルアップしていきたいと思います」
昨シーズンはCSベスト4に進出しリーグ中に存在感を示した三遠だが、今季はインサイドの要であるヤンテ・メイテンが開幕して間もない時期からケガにより長期欠場中。左アキレス腱断裂から復活を果たしたポイントガードの佐々木隆盛も復帰戦で異なる箇所のケガで再び戦線離脱となり、変わらず満身創痍の状態が続いている。宇都宮戦前までは通算9勝12敗、3点差以内の試合は1勝4敗と接戦を取りきれない部分も、そうしたチーム状況が影響してきたことは否めないが、それが言い訳にならないことはチーム全員の意識として共有されている。
それだけに宇都宮戦の勝利は湧川自身はもちろん、今後、上昇気流に乗るきっかけになる可能性を秘めた内容でもあった。
三遠の大野篤史HCも湧川に期待を寄せるからこそ、プロとして必要な要素を求める。
「バイウィーク明けに本人とよく話しているのは、もっと能動的にならなきゃいけない、ということです。今までの彼はそれぞれの担当コーチに『次は何をしますか』とやるべきことの答えを求めていましたが、その部分を改善しない限り成長がないかなと考えていたからです。
まずは自分でやるべきこと、足りない部分や課題を自ら見つけていこうとコミュニケーションを取り始めて、やっと自分で答えを探し始めたところかなと思っています。そこを一つのきっかけとして、もっと成長していってもらえたらなと思っています」
10勝13敗となった三遠は次節(12月20、21日)、ホームにシーホース三河を迎えての東海ダービーとなる。現在、16勝7敗で西地区3位の三河相手に自分たちのバスケットをいかに展開できるか。湧川のさらなる飛躍が鍵を握る。
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