プレミアリーグは、その歴史の中でも最も重要で議論を呼ぶ改革の一つを実施しようとしている。裕福なクラブの財政的な力を大幅に制限する「ハードキャップ」の導入だ。
この案は「アンカリング(Anchoring)」と呼ばれ、11月に投票が行われる予定だ。資金が潤沢なビッグクラブと競争の均衡を求める中堅クラブとの間で対立が起きている。
もし承認されれば、この施策は世界で最も裕福で最高峰のフットボールリーグの経済的な構造を根本から変えることになる。
この改革は、現在のPSR(Profitability and Sustainability Rules:収益性と持続可能性に関する規則)のもとで拡大してきた財政格差を是正する試みだが、すでに選手組合などから強い反発を受けており、法的措置に発展する可能性もある。
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上限は5億5000万ポンド:キャップの仕組み
新たな「アンカリング」案では、各クラブの支出総額(選手の給与、移籍金、代理人手数料を含む)が、前シーズンのプレミアリーグ最下位チームが得た放映権料および賞金総額の5倍を超えてはならないと定められている。
最近の数字に基づけば、この支出上限はおよそ5億5000万ポンド(約1100億円)となる見込みだ。
この金額は現時点では非常に高額だが、今後リーグのトップクラブが財政的に突き抜けるのを防ぎ、支出の増加を抑えるための具体的な手段として設計されている。
この提案が成立するには、全20クラブのうち3分の2(14クラブ)の賛成が必要となる。
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ビッグクラブとPFAの反発
この計画に対して、最も大きく影響を受けるクラブからは即座に強い反対の声が上がっている。
マンチェスター・シティやマンチェスター・ユナイテッドといったビッグクラブが反対しており、この上限制度はプレミアリーグのヨーロッパでの優位性を損なうと主張している。
彼らは、支出を制限することで、レアル・マドリードやパリ・サンジェルマンといった欧州の強豪クラブと競争することが不可能になる。また、アーリング・ハーランドやモハメド・サラーのような世界的スター選手がリーグを離れるリスクが高まると訴えている。
さらに、イングランドのプロサッカー選手協会のPFA(プロフェッショナル・フットボーラーズ・アソシエーション)も強い反発を示し、法的手段を取る構えを見せている。
PFAは過去にEFL(イングリッシュ・フットボールリーグ)が下部リーグでサラリーキャップを導入しようとした際に、賃金や自由競争の不当な制限であるとして異議を唱え、これを撤回させた実績がある。
11月の投票に向けて、プレミアリーグはまさに分岐点に立たされている。
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原文:The Premier League’s controversial plan to introduce a salary cap
翻訳:小鷹理人(スポーティングニュース日本版)