ジョナサン・クミンガの契約については、ここ1年にわたりウォリアーズにとって大きな話題だった。そして今、それは終焉に差し掛かっている。
ウォリアーズがプレーオフから敗退したことで、チームは夏のオフシーズンへと焦点を移すことになる。とはいえ、彼らにはFAで選手を獲得するためのキャップスペースもなければ、2025年のドラフト1巡目指名権もない。今オフ最大の課題は、制限付きFAとなるクミンガをどうするかだ。
プレーオフ2回戦の前までは、クミンガとウォリアーズの間に別れが近づいていると見られていた。2021年、ドラフト7位指名された才能あるフォワードは、さまざまな理由からスティーブ・カーHCのローテーションから外されていた。
しかし、ステフィン・カリーが第1戦でハムストリングを負傷したことで状況は一変し、22歳のクミンガは再び出場機会を得た。
彼が出場すると、オフェンス面での輝きを見せる瞬間もあったが、同時にタイミングの悪い判断をする癖も露呈した。
クミンガは、カリーとウォリアーズの「読み」に基づくオフェンスシステムにはうまくフィットしてこなかった。その問題はジミー・バトラーが加入してからさらに悪化した。バトラーはクミンガと同じスペースを使う傾向があるためだ。『The Ringer』のローガン・マードックによれば、シーズン終盤のある試合では、それが決定打になったかもしれない。
クミンガは優れたスコアラーではあるが、いわゆる「フィーリング(感覚)」に欠ける選手だ。それは不安定なパス回しや、決め打ちのようなドライブからも見て取れる。マードックは「シーズン終盤のブレイザーズ戦で、クミンガがカリーへのパスを無視して自分で得点を狙いに行ったプレーが何度かあり、カーHCは激怒していた」と記している。
ただし、クミンガはカリー不在時にスコアリング面でチームを牽引し、オフェンスの主軸になれる可能性を見せた。それはどれほどの価値があるのか?そして、ウォリアーズはフィットしない選手にどれだけの対価を払うべきなのか?
ジョナサン・クミンガの価値はどれくらいなのか?
1年前、クミンガはウォリアーズに5年2億2400万ドルのマックス契約を求めていたが、ウォリアーズは、年3000万ドル以上の支払いには興味を示していなかった。
今振り返れば、その判断は正しかったように見える。クミンガは苦しい1年を過ごし、彼に3000万ドル以上を提示するチームは現実的に減っている。
EPM(Estimated Plus-Minus)に基づくサラリーモデルでは、クミンガの年俸は2100万ドルが妥当とされている。ただ、実際にはそれに数百万ドル上乗せされたオファーが来る可能性があるだろう。
シーズン | 得点 | リバウンド | FG% | 3P% |
2021-22 | 9.3 | 2.6 | 51.3 | 33.6 |
2022-23 | 9.9 | 2.4 | 52.5 | 37.0 |
2023-24 | 16.1 | 3.6 | 52.9 | 32.1 |
2024-25 | 15.3 | 3.4 | 45.4 | 30.5 |
ジョナサン・クミンガの移籍先候補は?
FA市場で他チームと契約する場合、クミンガにとっての選択肢はそれほど多くない。
最有力はブルックリン・ネッツだ。今夏、大きなキャップスペースを持つ唯一のチームであり、『The Stein Line』のマーク・スタインによると、以前からクミンガに関心を示してきた。
また、デトロイト・ピストンズも理論上はキャップスペースを空けて獲得に動けるが、その場合はマリク・ビーズリー、ティム・ハーダウェイJr.、デニス・シュルーダーといったFA選手と再契約するのが困難になる。
こうした状況から、ウォリアーズはクミンガを引き留める優位性を持っている。ただし、「引き留めたいかどうか」が問題だ。クミンガの価値は、ウォリアーズより他チームの方が高く評価しているかもしれない。

ジョナサン・クミンガのサイン&トレードの可能性
クミンガとウォリアーズにとって理想的なシナリオのひとつが、サイン&トレードによる移籍だ。これなら、ネッツやピストンズ以外のキャップスペースのないチームにも移籍の可能性が広がる。ウォリアーズはドラフト指名権や有能なローテーション選手を見返りに得られ、クミンガはよりよい役割と報酬を得られる。
ただし、理論的には魅力的でも、現実には複雑な問題がある。クミンガは「ベース・イヤー・コンペンセーション(BYC)」という特殊なキャップルールの対象となる。これは、前年より大幅にサラリーが上がる選手に適用されるルールで、通常のトレード時の年俸マッチが使えない。
その結果、クミンガの新年俸の半額ちょっとまでの年俸を持つ選手しかトレードで受け取れないのだ。つまり、サイン&トレードを成立させるには、複数のチームを巻き込む必要があり、それぞれが見返りを求めてくる。
では、クミンガを欲しがるチームはあるのか?ミルウォーキー・バックスは若手人材を強く必要としており、ヤニス・アデトクンボを含む複数チームを絡めたトレードの一部としてクミンガを欲しがる可能性がある(ただし、ヤニスがウォリアーズに来るという話ではない)。
ボストン・セルティックスは高額選手の放出を検討しているとされており、アキレス腱断裂から回復中のジェイソン・テイタムの穴埋めとしてクミンガを獲得する可能性がある。
また、ニューオーリンズ・ペリカンズがザイオン・ウィリアムソンを放出する動きを見せた場合、クミンガは大型トレードの一部としてペリカンズ入りする可能性もある。
いずれにせよ、こうしたトレードでクミンガは主役ではなく、3番手か4番手のパーツとなる。ウォリアーズが得られる見返りも、「1巡目下位指名権+使えるローテーション選手」が現実的なラインとなるだろう。
昨年、クレイ・トンプソンのサイン&トレードが成立したときも、6チームが絡んだ大規模な取引だった。ウォリアーズはその際に、2つの2巡目指名権、カイル・アンダーソン、バディ・ヒールドを獲得している。
クミンガについても、それに似た形でのトレードが検討される可能性はある。
原文:Jonathan Kuminga contract prediction: What he's worth, where he could go, and possible sign-and-trades
抄訳:佐藤瑞紀(スポーティングニュース日本版)