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全英女子オープン優勝者のクラブセッティング比較|山下美夢有と歴代女王の“勝利の14本

加古浩子 Hiroko Kako

全英女子オープン優勝者のクラブセッティング比較|山下美夢有と歴代女王の“勝利の14本 image

ゴルフのメジャー大会は、プロたちの技術や戦略そして精神力が試される大きな舞台だ。先日の『全英女子オープン』でも山下美夢有がその頂点に立ち、日本女子ゴルフ界にまたひとりメジャー覇者が誕生した。そこで山下美夢有を皮切りに過去5年間の『全英オープン女子』の優勝者が使用していたクラブセッティングを分析。飛距離だけでは測れないプロたちの哲学を、アマチュアのギア選択の参考に役立てたい。

全英女子オープン覇者たちのクラブセッティング

先ずは『2025全英女子オープン』優勝の山下美夢有のクラブセッティングを見てみよう。

2025年優勝者・山下美夢有のクラブセッティング

クラブ種別

モデル名・特徴

ドライバー

 スリクソン ZXi
特徴:ロースピン設計、高反発フェース

フェアウェイウッド

スリクソン ZX MkⅡ(3W,5W)

特徴:操作性重視、高慣性モーメント

ユーティリティ

スリクソンZX Mk(4U)

特徴:飛距離と直進性の両立。風対応性能

アイアン

スリクソンZXi5(6I)
スリクソンZXi7(7I~PW)

特徴:ZXi5は風対応
   ZXi7は操作性と打感の良さ

ウェッジ

クリーブランドRTZ (48°・58°)

特徴:高いスピン性能、方向安定性

パター

テーラーメイド スパイダーツアーX

特徴:構えやすさ、安定性、打感の揃ったツア ー仕様モデル

ボール

スリクソン Z-STAR  XV

特徴:空力性能と製品精度の高さから風に強い

風の強いリンクスコースで、ドライバーも安定したフェアウェイキープをして優勝することができた山下。気に入ったモデルを長く使用する選手だが、今回のシャフトは通常の「フジクラ スピーダーNXグリーン50SR」から「40SR」に変更した。海外で勝つために試行錯誤を繰り返しているようだ。

また山下は通常のセッティングで、ウッドは7Wを使用することが多いが、今回は風対策として、ユーティリティの4Uを選択した。

Caves Valley Golf Club, BMW Championship

ここからは全英女子オープン過去4年間の優勝者セッティング比較を行う。

2024年優勝者・リディア・コのクラブセッティング

クラブ種別

モデル名・スペック

ドライバー

ピン G430 MAX10K

フェアウェイウッド

ピン G430 MAX(3W)

ユーティリティ

ピン G430 MAX(3U・4U)

アイアン

ピンGi230(5I~7I)

ピンブループリントS(8I~9I)

ウェッジ

タイトリスト ボーケイSM10(44°・47°・54°)

パター

スコッティ・キャメロン P5GSSツアープロトタイプ

2023年優勝 リリア・ヴのクラブセッティング

クラブ種別

モデル名・スペック

ドライバー

テーラーメイド ステルスプラス

フェアウェイウッド

キャロウェイ アペックス(3W・7W)

ユーティリティ

キャロウェイ アペックス(3U・5U)

アイアン

スリクソンZ585(4I)

スリクソンZX7 MkⅡ(5I~PW)

ウェッジ

タイトリスト ボーケイSM9(56°・60°)

パター

スコッティ・キャメロンGOLO5ツアープロトタイプ

2022年優勝  アシュリー・ブハイのクラブセッティング

クラブ種別

モデル名・スペック

ドライバー

スリクソンZXi LS

フェアウェイウッド

スリクソンZX(3W)

ユーティリティ

ピン G430 MAX(3U・4U)

アイアン

ピンGi230(5I~7I)

ピンブループリントS(8I~9I)

ウェッジ

ボーケイSM10(44°・47°・54°)

パター

スコッティキャメロン P5GSSツアープロトタイプ

2021年優勝 アンナ・ノルドビクスのクラブセッティング

クラブ種別

モデル名・スペック

ドライバー

タイトリスト TSi3

フェアウェイウッド

タイトリスト TSi2(3W)

ユーティリティ

タイトリスト PXG037X(3U・5U)

アイアン

タイトリスト T100S(5I~PW)

ウェッジ

ボーケイSM8(50°・54°・58°)

パター

ハンサムTOO

山下美夢有のクラブセッティングは、2022年優勝のアシュリー・ブハイ同様に日本ブランドで構成されており、山下の日本ブランドへの信頼と継続を象徴しているようだ。他の選手はブランドミックスが主流でウェッジ、パターはタイトリストが多い。

アイアンを見ると山下はZXi5とZXi7のコンボで、距離と操作性のバランスを重視している。これはリディア・コの8I・9Iにブループリントを採用した同様の戦略といえる。ウェッジは3本体制が主流となっていることが分かる。

今回の山下のセッティングは、日本ブランドへの信頼と海外ツアーに対応した合理性の融合だ。アイアンとウェッジにおけるコンボ構成は、他の優勝者同様に制度を重視したショットメーカー型といえるだろう。

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プロのセッティングから見えてくることは?

■風対応

全英ではリンクス特有の強い風に対応するため、アイアン型のユーティリティを使用するなど選手もさまざまな対応を試みている。今年話題となったのは、ボールだ。山下は『スリクソン』の「Z-STAR XV」を使用した。

余談だが、全英男子を戦った松山英樹が同社のボールを使用した際に風に対する強さを証明。松山の弾道を見たブルックス・ケプカは、『スリクソン』のボールを使用し始めたという経緯がある。

■番手に入れ替えによる戦略

今回、山下は7Wから4Uに変更した。7Wは高弾道になりやすく、風に流されるリスクが大きい。また飛距離は出るが、高さとスピン量を安定させることが難しい。そこで4Uを使用し、低い弾道で強いショットを狙った可能性が高い。

またリンクスは芝が薄く地面は硬いため、ソールの広い7Wは跳ねやすい。ユーティリティならソールが狭く地面との接地が安定するので、ミスを避けられる可能性が高くなる。

■アイアンのコンボ構成

山下のアイアンを見ると、6IにはZXi5を選択し、7IからはZXi7とモデルを使い分けている。長めのアイアンには寛容性を重視し、7Iからは操作性を重視した使い分けを行っている。各クラブの特性を理解して、状況に応じて選択することの重要性を山下美夢有は見事に教えてくれたといえるだろう。

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加古浩子 Hiroko Kako

スポーティングニュース日本版コンテンツライター