■スター選手のスパーリング相手になるといくらもらえる?
世界トップクラスのボクサーの「スパーリングパートナー」を務めると、一体どのくらいのギャラが支払われるものなのだろうか?
WBAインターコンチネンタル・ヘビー級王者のデイブ(デイビッド)『ホワイト・ライノ』アレン(24勝7敗2分、19KO)がスポーツニュースサイト『TalkSport』のインタビューでその金額を明かした。
現在33歳の英国人ボクサーのアレンはプロとして12年以上戦ってきており、その間にはオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)をはじめ、この世代の最高峰の世界チャンピオンたちのスパーリングパートナーを務めてきた。
「スパーリングで最も稼いだのはウラジミール・クリチコ(ウクライナ)かな」とアレンは明かした。
「あの時は自分の身長や体重、フィットネスレベルを偽ってキャンプ(練習)に潜り込んだんだ」
「(クリチコのキャンプには)長くはいなかったが、彼はいいヤツだった。クリチコには10人ほどのスパーリングパートナーがいたけど、とてもプロフェッショナルな対応だった。その時は週に1500ポンド(1ポンド196円換算で約29万4,000円、以下同)稼いだ。みんな同じ金額だったよ。つまりスパーリングパートナーに10万ポンド(約1960万円)近く使ってたと言うことだ」
「彼(クリチコ)は究極のプロフェッショナルだった。スパーリングは激しく、容赦なかった。でも報酬が報酬だったからね、文句は言わなかったよ」
デイブ・アレンは、アマチュア戦を10試合しか経験せずに2012年にプロに転向した。その後、プロ公式戦での10試合の間に将来の世界タイトル挑戦者となるディリアン・ホワイト(英国)やルイス・オルティス(キューバ)と対戦した。
まさしく実戦の場で学びながら戦っていた彼にとって、同じ階級の上位選手のスパーリングパートナーを務めることは、報酬はもちろんのこと、ボクシングを学ぶ上でも非常に価値のある経験だった。
■統一王者ウシクとのスパーリングで痛い目に
「ウシクも非常に高額な報酬を支払ってくれた。2週間で2000ポンド(約39万2,000円)だった」とアレンは付け加えた。
ネット上には、ウシクがアレンに強烈な一打を浴びせたあと、ふらつくアレンが倒れないように受け止めるシーンの動画が残されている。アレンはそのラウンドを終えると、すぐさま荷物をまとめてその場を去ったと回想する。
「正直に言うが、ウシクとのスパーリングでは自分は気絶させられていた。(それでも)倒れなかったし、ラウンドを最後まで続けた。彼に殴られたのは覚えている。でも、そのラウンドの残りは記憶になくて、次に気づいた時にはリングの外に立っていて、荷物をまとめていた。脳震盪を起こしていたんだ。それが決め手だった。自分も馬鹿じゃないから、そこが(ウシクの相手の)辞め時だと分かったよ」
「そう、大金は得られたかもしれないけど、その代償は? 恥をかくこと? 怪我をするのと恥をかくのは別の代物だ」
■友人なら無料で受けることも
スパーリングパートナーは必ずしも厳格なビジネスではなく、時には友人同士の関係の中で引き受けることもある。
「AJ(アンソニー・ジョシュア、英国)とスパーリングをした時には、(当時)2人ともアマチュアだったので報酬はもらわなかった」とアレンは言う。
「プロになって最初の3年間も彼とスパーリングをしたけど、その時は報酬をもらうべきだったかもしれない。でも、自分たちは友人同士だったからね」
「タイソン(フューリー、英国)は時々お金を渡してくれたが、彼はいつも親切だったし、私たちは友人だった。彼が徐々にペースを上げていくんだけど、自分は大抵最初の数ラウンドを担当して、自分の後に入る誰かが彼に叩きのめされるパターンだったね」
「彼の復帰戦、(セファー)セフェリ(マケドニア)と(フランチェスコ)ピアネタ(イタリア)の前のスパーリングもリッキー・ハットンのジムでやった。彼はスパーリングのギャラ100ポンドに20ポンドを食事代としてプラスしてくれたから、いつもその金で角にあったKFCに行ってたのを覚えているよ」
■スター選手相手のスパーリングパートナーの報酬額
まとめてみると
- ウラジミール・クリチコ:1,500ポンド(約29万4000円)/週
- オレクサンドル・ウシク:1,000ポンド(約19万6000円)/週
- タイソン・フューリー:120ポンド(約2万3520円)/セッション
- アンソニー・ジョシュア:0ポンド
アレンはそのキャリアを通じて、ホワイト、オルティス、トニー・ヨカ(フランス)、ニック・ウェブ(英国)、ルーカス・ブラウン(オーストリア)、デビッド・プライス(英国)、フレイザー・クラーク(英国)、そして最近ではジョニー・フィッシャー(英国)と対戦してきた。
原文:Heavyweight reveals how much he earns sparring world champions
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)